2017年10月21日

その後のLorlatinib

 ALK阻害薬、Lorlatinibのその後のお話。

2017年世界肺癌会議

<ALK陽性進行肺癌およびROS1陽性進行肺癌におけるLorlatinib療法>

By The ASCO Post
Posted: 10/17/2017 11:53:11 AM
Last Updated: 10/17/2017 5:02:02 PM

 2017年世界肺癌会議において、Lorlatinibに関する第II相試験の最終結果が報告された。Lorlatinibは、ALK陽性あるいはROS1陽性進行肺癌に対し、過去に濃厚な治療歴があっても、脳転移巣を含めて有効性を示す薬である。さらに言えば、有害事象についても十分対応可能である。
 Lorlatinibに関する第II相試験は、脳転移を有する患者、有さない患者をとりまぜて、計275人の患者を対象に行われた。患者は、癌のバイオマーカー(ALK陽性、もしくはROS1陽性)もしくは治療歴に基づいて、6グループのコホートに割り付けられた。主要評価項目は独立評価委員会判定による奏効割合・頭蓋内奏効割合とした。

・ALK陽性・未治療コホート
 奏効割合は90%(95%信頼区間は74-98%)、頭蓋内奏効割合は75%(95%信頼区間は35-97%)。
・ALK陽性、クリゾチニブによる治療歴あり、化学療法歴は問わない
 奏効割合は69%(95%信頼区間は56-81%)頭蓋内奏効割合は68%(95%信頼区間は50-82%)
・ALK陽性、クリゾチニブ以外のALK阻害薬による治療歴あり、化学療法歴は問わない
 奏効割合は33%(95%信頼区間は15-64%)、頭蓋内奏効割合は42%(95%信頼区間は15-72%)。
・ALK陽性、2種か3種のALK阻害薬を過去に用いたことあり、化学療法歴は問わない
 奏効割合は39%(95%信頼区間は30-49%)、頭蓋内奏効割合は48%(95%信頼区間は37-59%)
・ROS1陽性、その他には制限事項なし

 Lorlatinibによる有害事象は一般に対応可能なもののみである。有害事象は軽微なものばかりで、投与量減量や治療時期の延期、通常の診療で対応可能だった。治療関連死は皆無で、3%の患者で有害事象のために治療中止が必要だった。その他、高コレステロール血症(81%)、高中性脂肪血症(60%)、浮腫(43%)、末梢神経障害(30%)、体重増加(18%)、認知機能低下(18%)等が報告されている。
  

2017年10月21日

Lurbinectedin and Doxorubicin in Relapsed SCLC

 初回治療後に病勢進行した小細胞肺癌に対する新規二次治療の話。
 国内大規模臨床試験の結果、いわゆるsensitive relapseの場合にはイリノテカン+シスプラチン+エトポシド併用療法が標準治療として位置づけられている。
 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e815982.html
 しかし、そのプロトコールの複雑さのためか、実臨床で行われているところを見る機会はほとんどない。
 国内の大規模臨床試験の結果、生存期間延長効果が示されているにも拘らず、実臨床で殆ど行われていないというのはさびしい限りだ。
 ジーラスタを組み込んだ追試をすれば、もうすこし普及するかもしれない。
 実際のところ、アムルビシン単剤療法やノギテカン単剤療法といった、高度の骨髄抑制に悩まされる治療も、ジーラスタが導入されることでかなり管理しやすくなっているように感じる。
 
 小細胞癌の化学療法は、長きにわたり停滞している。
 しかも、我が国、米国、欧州のそれぞれで、治療の考え方がバラバラである。
 今回の報告も、Doxorubicinが治療に組み込まれていることや、引き続く第III相試験の標準治療としてCAV療法が組み込まれていることを考えると、欧州主導の臨床試験と思われる。
 したがって、たとえ第III相試験で有望な結果が出たとしても、すんなり国内に受け入れられるとは考えにくい。



2017年世界肺癌会議
<再燃小細胞肺癌に対するLurbinectedin+Doxorubicin併用化学療法>

By The ASCO Post
Posted: 10/16/2017 10:41:26 AM
Last Updated: 10/16/2017 4:31:05 PM

 2017年世界肺癌会議で、再発小細胞肺癌に対するLurbinectedin(PM1183)+Doxorubicin併用療法の第I / II相試験の最終報告が行われた。本データは、Annals of Oncology誌に発表された。
 本試験において、Lurbinectedin+Doxorubicin併用療法後の無増悪生存期間中央値が5.3ヶ月、奏効割合が37%に達したことが示された。標準治療であるトポテカン療法(無増悪生存期間中央値は3.0-3.5ヶ月、奏効割合は17-24%と過去の研究で報告されている)と比較して、有望だった。
 一次治療において、プラチナ併用化学療法に感受性だった患者(sensitive - relapse patients)では、Lurbinectedin+Doxorubicin併用療法後の無増悪生存期間中央値は6.2ヶ月に達した。一方、標準治療のトポテカン療法では、こうした患者の無増悪生存期間中央値は3.25-4.3ヶ月と過去の研究で報告されている。
 本試験において、治療に関連した有害事象(主として血液学的なものだった)は一過性であり、投与量の最適化により管理可能なものだった。Lurbinectedinは胃腸粘膜障害、末梢神経障害、脱毛をきたさなかった。
 本試験の結果を受けて、第III相ATLANTIS試験が開始された。これは20ヶ国、154施設から600人の患者が参加し、Lurbinectedin+Doxorubicin併用療法、トポテカン療法、CAV(Cyclophosphamide, Doxorubicine, Vincristine)療法の3群に割り付けられる比較試験である。

  

Posted by tak at 23:16Comments(0)化学療法