2017年10月13日
Abemaも退場
細かいデータ開示は来年に持ち越されるようだが、サイクリン依存性キナーゼ阻害薬であるAbemaciclibは、第III相臨床試験でErlotinibに対する優越性を示せなかった。
予後不良とされるKRAS遺伝子変異に対する治療効果が期待されていたが、残念な結末に終わった。
この患者群においては、免疫チェックポイント阻害薬を積極的に使うべきだろう。
ただし、実地臨床でEGFR, ALK, ROS1, PD-L1に加えて、ルーチンでKRASを調べている病院は殆どないだろう。
第III相JUNIPER試験-KRAS遺伝子変異を有する進行非小細胞肺癌に対するAbemaciclibの効果
By The ASCO Post
Posted: 10/12/2017 1:46:52 PM
Last Updated: 10/12/2017 1:48:19 PM
2017年10月10日、イーライリリー社はサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4 / 6阻害薬であるAbemaciclibの治療効果を評価した第III相JUNIPER試験において、主要評価項目である全生存期間の延長を達成できなかったと報告した。
しかしながら、副次評価項目である無増悪生存期間と奏効割合では、Abemaciclibの有効性が確認された。加えて、対象群では事前予測よりも良好な生存期間を認めた(ということは、平均的な標準治療の成績よりは優れている可能性がある→詭弁だと思うけど)。イーライリリー社では、2018年中に開催される各種学会においてデータを公表する予定である。
JUNIPER試験は、国際共同第III相臨床試験だった。対象は、プラチナ併用化学療法施行後に病勢進行に至り、更なる全身薬物療法を受ける余地のある、KRAS遺伝子変異陽性のIV期非小細胞肺癌患者とした。総計453人の患者が、abemaciclib群もしくはerlotinib群に無作為割付された。主要評価項目は全生存期間で、副次評価項目は安全性、奏効割合、無増悪生存割合だった。有害事象は過去のAbemaciclibの臨床試験と概ね同様で、下痢、倦怠感、食欲不振、嘔気が主だった。
予後不良とされるKRAS遺伝子変異に対する治療効果が期待されていたが、残念な結末に終わった。
この患者群においては、免疫チェックポイント阻害薬を積極的に使うべきだろう。
ただし、実地臨床でEGFR, ALK, ROS1, PD-L1に加えて、ルーチンでKRASを調べている病院は殆どないだろう。
第III相JUNIPER試験-KRAS遺伝子変異を有する進行非小細胞肺癌に対するAbemaciclibの効果
By The ASCO Post
Posted: 10/12/2017 1:46:52 PM
Last Updated: 10/12/2017 1:48:19 PM
2017年10月10日、イーライリリー社はサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4 / 6阻害薬であるAbemaciclibの治療効果を評価した第III相JUNIPER試験において、主要評価項目である全生存期間の延長を達成できなかったと報告した。
しかしながら、副次評価項目である無増悪生存期間と奏効割合では、Abemaciclibの有効性が確認された。加えて、対象群では事前予測よりも良好な生存期間を認めた(ということは、平均的な標準治療の成績よりは優れている可能性がある→詭弁だと思うけど)。イーライリリー社では、2018年中に開催される各種学会においてデータを公表する予定である。
JUNIPER試験は、国際共同第III相臨床試験だった。対象は、プラチナ併用化学療法施行後に病勢進行に至り、更なる全身薬物療法を受ける余地のある、KRAS遺伝子変異陽性のIV期非小細胞肺癌患者とした。総計453人の患者が、abemaciclib群もしくはerlotinib群に無作為割付された。主要評価項目は全生存期間で、副次評価項目は安全性、奏効割合、無増悪生存割合だった。有害事象は過去のAbemaciclibの臨床試験と概ね同様で、下痢、倦怠感、食欲不振、嘔気が主だった。
2017年10月13日
モテサニブ、退場
マルチキナーゼ活性を有する小分子VEGFR阻害薬、モテサニブは、残念ながら有意な治療効果を示せなかった。
VEGFやVEGFRをターゲットとした薬は、なかなかうまく行かない。
bevacizumabやramcirumabは、このカテゴリーの薬の中では生存期間延長効果がかろうじて示された、稀有な例というべきだろう。
東アジア地域の進行非小細胞肺がん患者に対するカルボプラチン+パクリタキセル+モテサニブ併用療法
By Matthew Stenger
Posted: 9/27/2017 11:01:33 AM
Last Updated: 9/27/2017 11:01:33 AM
MONET-A第III相臨床試験は、東アジア地域の進行 / 再発、非扁平上皮・非小細胞肺がん患者を対象として、マルチキナーゼ活性を有するVEGFR阻害薬のモテサニブをカルボプラチン+パクリタキセル併用療法に追加しても、有意な無増悪生存期間延長効果がないことを示した。本試験の概要はJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。第II相試験までの段階では、進行非小細胞肺がん患者のうち東アジア人のサブグループにおいて有望とみなされていた。
今回の二重盲権試験では、2012年7月から2015年3月にかけて、日本、韓国、台湾、香港の52施設から401人(うち71%は日本から)の患者が2つの治療群に無作為割付された。モテサニブ群(197人)ではモテサニブ+カルボプラチン+パクリタキセル療法が行われ、プラセボ群(204人)ではプラセボ+カルボプラチン+パクリタキセルが投与された。層別化因子はEGFR遺伝子変異の状態、登録地域、登録前6ヶ月間の体重減少とされた。主要評価項目は無増悪生存期間だった。
経過観察期間の中央値はモテサニブ群で10.3ヶ月、プラセボ群で10.1ヶ月だった。無増悪生存期間中央値はモテサニブ群で6.1ヶ月、プラセボ群で5.6ヶ月だった(ハザード比0.81、p=0.820)。生存期間中央値はモテサニブ群で未到達、プラセボ群で21.6ヶ月だった(p=0.5514)。奏効割合はモテサニブ群で60.1%、プラセボ群で41.6%だった(p<0.001)。奏効までの期間の中央値はモテサニブ群で1.4ヶ月、プラセボ群で1.6ヶ月、奏効持続期間中央値はモテサニブ群で5.3ヶ月、プラセボ群で4.1ヶ月だった。サブグループ解析では、EGFR遺伝子変異陽性集団、5%以上の体重減少を伴っていた集団、術後補助化学療法を行わなかった集団、放射線治療歴のある集団ではモテサニブ群で無増悪生存期間が延長する傾向にあった。
Grade 3 / 4の有害事象は、モテサニブ群で86.7%、プラセボ群で67.6%で認められた。重篤な有害事象はそれぞれ48%、32.4%で認めた。モテサニブ群における有害事象の主たるものは、胃腸障害、高血圧、胆嚢関連有害事象だった。
VEGFやVEGFRをターゲットとした薬は、なかなかうまく行かない。
bevacizumabやramcirumabは、このカテゴリーの薬の中では生存期間延長効果がかろうじて示された、稀有な例というべきだろう。
東アジア地域の進行非小細胞肺がん患者に対するカルボプラチン+パクリタキセル+モテサニブ併用療法
By Matthew Stenger
Posted: 9/27/2017 11:01:33 AM
Last Updated: 9/27/2017 11:01:33 AM
MONET-A第III相臨床試験は、東アジア地域の進行 / 再発、非扁平上皮・非小細胞肺がん患者を対象として、マルチキナーゼ活性を有するVEGFR阻害薬のモテサニブをカルボプラチン+パクリタキセル併用療法に追加しても、有意な無増悪生存期間延長効果がないことを示した。本試験の概要はJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。第II相試験までの段階では、進行非小細胞肺がん患者のうち東アジア人のサブグループにおいて有望とみなされていた。
今回の二重盲権試験では、2012年7月から2015年3月にかけて、日本、韓国、台湾、香港の52施設から401人(うち71%は日本から)の患者が2つの治療群に無作為割付された。モテサニブ群(197人)ではモテサニブ+カルボプラチン+パクリタキセル療法が行われ、プラセボ群(204人)ではプラセボ+カルボプラチン+パクリタキセルが投与された。層別化因子はEGFR遺伝子変異の状態、登録地域、登録前6ヶ月間の体重減少とされた。主要評価項目は無増悪生存期間だった。
経過観察期間の中央値はモテサニブ群で10.3ヶ月、プラセボ群で10.1ヶ月だった。無増悪生存期間中央値はモテサニブ群で6.1ヶ月、プラセボ群で5.6ヶ月だった(ハザード比0.81、p=0.820)。生存期間中央値はモテサニブ群で未到達、プラセボ群で21.6ヶ月だった(p=0.5514)。奏効割合はモテサニブ群で60.1%、プラセボ群で41.6%だった(p<0.001)。奏効までの期間の中央値はモテサニブ群で1.4ヶ月、プラセボ群で1.6ヶ月、奏効持続期間中央値はモテサニブ群で5.3ヶ月、プラセボ群で4.1ヶ月だった。サブグループ解析では、EGFR遺伝子変異陽性集団、5%以上の体重減少を伴っていた集団、術後補助化学療法を行わなかった集団、放射線治療歴のある集団ではモテサニブ群で無増悪生存期間が延長する傾向にあった。
Grade 3 / 4の有害事象は、モテサニブ群で86.7%、プラセボ群で67.6%で認められた。重篤な有害事象はそれぞれ48%、32.4%で認めた。モテサニブ群における有害事象の主たるものは、胃腸障害、高血圧、胆嚢関連有害事象だった。
2017年10月12日
減少の兆しなし
このところ、すっかり記載が滞ってしまった。
ESMO 2017で報告されたFLAURA studyのことすら、まだまとめきれずにいる。
EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌一次治療において、いわゆる第1世代のEGFR阻害薬に対し、OsimertinibがPFSで優越性を証明したとのこと。
これを受けて、もはや第1世代のEGFR阻害薬の出番はなくなるのか。
第2世代のEGFR阻害薬との使い分けはどうするのか。
そもそも、Osimertinibを一次治療で使った場合、全体の生存期間は延びるのか。
不確定要素は多いものの、今回の結果を受けて一次治療からOsimertinibを使いたいと考える患者、医師は少なくないだろう。
再生検する必要ないから。
肺癌の年齢調整死亡率は、先進諸国においては20世紀後半から減少傾向だが、その実感は今のところあまりない。
Osimertinibが実地臨床で使用できるようになってから、それなりに時間がたった。
そろそろ、耐性化する患者が目立ち始めた。
ドライバー遺伝子変異を有する患者では、新薬の登場で、分子標的薬を使い始めてから化学療法への移行を余儀なくされるまでの期間が長期化する傾向にある。
それだけに、化学療法に移行するタイミング、化学療法への移行を患者・家族に推奨するテクニックは、これまでより遙かに難しくなっているような印象を受ける。
ESMO 2017で報告されたFLAURA studyのことすら、まだまとめきれずにいる。
EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌一次治療において、いわゆる第1世代のEGFR阻害薬に対し、OsimertinibがPFSで優越性を証明したとのこと。
これを受けて、もはや第1世代のEGFR阻害薬の出番はなくなるのか。
第2世代のEGFR阻害薬との使い分けはどうするのか。
そもそも、Osimertinibを一次治療で使った場合、全体の生存期間は延びるのか。
不確定要素は多いものの、今回の結果を受けて一次治療からOsimertinibを使いたいと考える患者、医師は少なくないだろう。
再生検する必要ないから。
肺癌の年齢調整死亡率は、先進諸国においては20世紀後半から減少傾向だが、その実感は今のところあまりない。
Osimertinibが実地臨床で使用できるようになってから、それなりに時間がたった。
そろそろ、耐性化する患者が目立ち始めた。
ドライバー遺伝子変異を有する患者では、新薬の登場で、分子標的薬を使い始めてから化学療法への移行を余儀なくされるまでの期間が長期化する傾向にある。
それだけに、化学療法に移行するタイミング、化学療法への移行を患者・家族に推奨するテクニックは、これまでより遙かに難しくなっているような印象を受ける。