2016年02月12日
脳転移陽性患者さんへのafatinib
LUX-Lung 3およびLUX-Lung6の臨床試験において、脳転移を有する患者さんのみでサブグループ解析をした際の結果が以下の論文に報告されています。
当たり前と言えば当たり前の結果で、もはやEGFR遺伝子変異陽性の肺癌患者さんに対する初回治療を化学療法から開始するという医師は少ないと思いますので、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬同士での比較ではどうなるのか、といったところが気になります。
そもそも、脳転移を有する患者さんにおいての有効性を比較するのと同様に、脳転移を新規発症させない治療はどれなのか、という観点が必要です。
一般に、gefitinibよりもerlotinibの方が脳転移によって病勢進行に至るリスクが低いと言われており(近いうちに記事としてまとめようと思っています)、gefitinibでは第II相ながらしっかりとした前向き臨床試験の結果が報告されているにも関わらず、ヒトにおける髄液移行性のデータや後方視的な検討の結果から、巷では2014年ごろからerlotinibの処方が増えつつあるようです(学会上でも、このころからerlotinibを推す雰囲気が増してきたように感じます)。
さてafatinibではどうなのか、となると、まだこういったデータがありません。
afatinibに関して、各種臨床試験の追跡調査の結果から脳転移により病勢進行に至った割合や、治療開始から脳転移が出現するまでの期間中央値といったデータが示されると、例え後方視的な検討でも有益ではないかと思っています。
http://www.jto.org/article/S1556-0864(15)00220-8/pdf
以下は、2016 / 2 / 2のASCO evening postから。
Afatinib Shows Clinical Benefit for Non–Small Cell Lung Cancer Patients With Brain Metastases
エクソン19や21のEGFR遺伝子変異を有し、脳転移を合併した非小細胞肺癌患者さんにおいて、afatinibはシスプラチン併用標準化学療法と比較して無増悪生存期間と奏効割合を改善することが明らかになった。
進行非小細胞肺癌患者のうち25%以上、EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺癌患者の44-63%は経過中に脳転移を合併する。この場合、生命予後は不良で、診断確定後1-5ヶ月程度とされている。
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬はEGFR遺伝子変異を有する進行非小細胞肺癌患者、中でもとりわけエクソン19欠失変異やエクソン21点突然変異を有する患者には効果が高い。EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対して一次治療として承認されているEGFRチロシンキナーゼ阻害薬は複数あるが、脳転移を有する患者を対象としたEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の効果を検証する前向き臨床試験のデータはあまりない。
EGFR遺伝子変異を有し、過去に治療歴のないIIIB / IV期の原発性肺腺癌の患者を対象に、afatinibとプラチナ併用標準化学療法の有効性を検証した無作為化オープンラベル第III相比較試験が2つある。LUX-Lung 3試験はafatinibとシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を比較したグローバルスタディーで、LUX-Lung 6は(試験開始当時は非小細胞肺癌に対してペメトレキセドが使用できなかった)中国、大韓民国、タイで行われたafatinibとシスプラチン+ジェムシタビン併用化学療法を比較する試験だった。
どちらの臨床試験においても、無症候性の、もしくは治療によりコントロールされた脳転移を有する患者は試験参加可能だった。主要評価項目は無増悪生存期間で、副次評価項目の中で重要なものとして全生存期間、奏効割合、患者による治療効果評価(≒QoL)が含まれていた。
これら2つの臨床試験の結果は既に学会・論文で報告されており、afatinibが有意に無増悪生存期間、奏効割合、QoLを改善することが示された。さらに、エクソン19変異を有する患者においては、afatinibが全生存期間を延長することが初めて示された(その他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬では示されていない)。
今回の解析では、参加登録時点で脳転移とEGFR遺伝子変異を有していた患者(LUX-Lung 3に参加した345人のうち35人(10.1%)とLUX-Lung 6に参加した364人のうち46人(12.6%))を対象とした。その結果、脳転移を有する患者でも、afatinibはプラチナ併用化学療法に対して有意に無増悪生存期間を延長し(8.2ヶ月 vs 5.4ヶ月、ハザード比0.50, p=0.0297)、奏効割合も高かった(73% vs 25%)。有害事象は脳転移を有さない患者における内容とほぼ同等で、予期せぬ有害事象は認められなかった。
当たり前と言えば当たり前の結果で、もはやEGFR遺伝子変異陽性の肺癌患者さんに対する初回治療を化学療法から開始するという医師は少ないと思いますので、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬同士での比較ではどうなるのか、といったところが気になります。
そもそも、脳転移を有する患者さんにおいての有効性を比較するのと同様に、脳転移を新規発症させない治療はどれなのか、という観点が必要です。
一般に、gefitinibよりもerlotinibの方が脳転移によって病勢進行に至るリスクが低いと言われており(近いうちに記事としてまとめようと思っています)、gefitinibでは第II相ながらしっかりとした前向き臨床試験の結果が報告されているにも関わらず、ヒトにおける髄液移行性のデータや後方視的な検討の結果から、巷では2014年ごろからerlotinibの処方が増えつつあるようです(学会上でも、このころからerlotinibを推す雰囲気が増してきたように感じます)。
さてafatinibではどうなのか、となると、まだこういったデータがありません。
afatinibに関して、各種臨床試験の追跡調査の結果から脳転移により病勢進行に至った割合や、治療開始から脳転移が出現するまでの期間中央値といったデータが示されると、例え後方視的な検討でも有益ではないかと思っています。
http://www.jto.org/article/S1556-0864(15)00220-8/pdf
以下は、2016 / 2 / 2のASCO evening postから。
Afatinib Shows Clinical Benefit for Non–Small Cell Lung Cancer Patients With Brain Metastases
エクソン19や21のEGFR遺伝子変異を有し、脳転移を合併した非小細胞肺癌患者さんにおいて、afatinibはシスプラチン併用標準化学療法と比較して無増悪生存期間と奏効割合を改善することが明らかになった。
進行非小細胞肺癌患者のうち25%以上、EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺癌患者の44-63%は経過中に脳転移を合併する。この場合、生命予後は不良で、診断確定後1-5ヶ月程度とされている。
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬はEGFR遺伝子変異を有する進行非小細胞肺癌患者、中でもとりわけエクソン19欠失変異やエクソン21点突然変異を有する患者には効果が高い。EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者に対して一次治療として承認されているEGFRチロシンキナーゼ阻害薬は複数あるが、脳転移を有する患者を対象としたEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の効果を検証する前向き臨床試験のデータはあまりない。
EGFR遺伝子変異を有し、過去に治療歴のないIIIB / IV期の原発性肺腺癌の患者を対象に、afatinibとプラチナ併用標準化学療法の有効性を検証した無作為化オープンラベル第III相比較試験が2つある。LUX-Lung 3試験はafatinibとシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を比較したグローバルスタディーで、LUX-Lung 6は(試験開始当時は非小細胞肺癌に対してペメトレキセドが使用できなかった)中国、大韓民国、タイで行われたafatinibとシスプラチン+ジェムシタビン併用化学療法を比較する試験だった。
どちらの臨床試験においても、無症候性の、もしくは治療によりコントロールされた脳転移を有する患者は試験参加可能だった。主要評価項目は無増悪生存期間で、副次評価項目の中で重要なものとして全生存期間、奏効割合、患者による治療効果評価(≒QoL)が含まれていた。
これら2つの臨床試験の結果は既に学会・論文で報告されており、afatinibが有意に無増悪生存期間、奏効割合、QoLを改善することが示された。さらに、エクソン19変異を有する患者においては、afatinibが全生存期間を延長することが初めて示された(その他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬では示されていない)。
今回の解析では、参加登録時点で脳転移とEGFR遺伝子変異を有していた患者(LUX-Lung 3に参加した345人のうち35人(10.1%)とLUX-Lung 6に参加した364人のうち46人(12.6%))を対象とした。その結果、脳転移を有する患者でも、afatinibはプラチナ併用化学療法に対して有意に無増悪生存期間を延長し(8.2ヶ月 vs 5.4ヶ月、ハザード比0.50, p=0.0297)、奏効割合も高かった(73% vs 25%)。有害事象は脳転移を有さない患者における内容とほぼ同等で、予期せぬ有害事象は認められなかった。
2016年02月12日
J-ALEX study 中間解析で有効中止
ALK再構成陽性肺癌の患者さんを対象に、crizotinibとalectinibの効果を直接比較する国内第III相試験「J-ALEX」試験ですが、中間解析の段階で主要評価項目である無増悪生存期間においてalectinibの優越性が確認されたらしく、早期有効中止となった模様です。
どちらもALK再構成陽性者のみをターゲットにした治療薬ですが、主要評価項目で早期有効中止になるのはちょっとした驚きです。
EGFR遺伝子変異の世界ではこんな現象は認められていないだけに、とても興味深い結果です。
ALK再構成陽性肺癌患者さんの初回治療選択において、大きなインパクトを残す(有効性と毒性の両面から考えると、alectinibが初回治療として選択される公算が極めて高い)結果になりそうです。
今年の各学会で徐々に結果が明らかになっていくと思われます。
また、国際的な試験として現在進行形の「ALEX study」の進捗も気になるところです。
J-ALEX試験早期有効中止のプレスリリースはこちらから。
http://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20160210150000.html
どちらもALK再構成陽性者のみをターゲットにした治療薬ですが、主要評価項目で早期有効中止になるのはちょっとした驚きです。
EGFR遺伝子変異の世界ではこんな現象は認められていないだけに、とても興味深い結果です。
ALK再構成陽性肺癌患者さんの初回治療選択において、大きなインパクトを残す(有効性と毒性の両面から考えると、alectinibが初回治療として選択される公算が極めて高い)結果になりそうです。
今年の各学会で徐々に結果が明らかになっていくと思われます。
また、国際的な試験として現在進行形の「ALEX study」の進捗も気になるところです。
J-ALEX試験早期有効中止のプレスリリースはこちらから。
http://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20160210150000.html