2011年06月21日
胃がんとハーセプチン
いち早く臨床導入された抗体医薬のひとつに、ハーセプチン(トラスツズマブ)があります。
乳癌の一部には、細胞膜上にHER2という蛋白がたくさん存在します。
そういった患者さんに対し、化学療法に加えてハーセプチンを用いると、治療効果が高くなります。
2009年の米国臨床腫瘍学会で、進行胃癌でもHER2がたくさんあったら、ハーセプチンの併用により治療効果が高まることが報告され、2010年の9月に以下の如く論文化されました。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S014067361061121X
なぜこんな話を突然始めるかというと、そんな患者さんに遭遇したからです。
胃癌術後で、肺に異常陰影が出現したため気管支鏡下生検を行ったら、胃癌の肺転移ということになりました。
肺に病巣があっても、原因が胃癌である以上は、治療は胃癌に準じたものとなります。
一応私もがん薬物療法専門医の端くれですから、上記の報告の存在くらいは知っていました。
病理医には「この組織型ではHER2が陽性になる可能性はほとんどないよ」と危うく門前払いをくらいそうになりましたが、食い下がって気管支鏡下生検組織を調べてもらったら強陽性でした。
肺癌におけるEGFR遺伝子変異もそうですが、陽性になりやすい場合とそうでない場合があります。
しかし、「陽性になりやすい」ことと「陽性である」こと、「陽性になりにくい」ことと「陽性でない」ことは全く意味合いが異なります。
結果によって患者さんの予後が大きく変わるとなると、検査をしないことは罪ですらあるように思います。
非小細胞肺癌の領域では、喫煙者や扁平上皮癌の患者にはEGFR遺伝子変異検査は不要であるとの風潮が有ります。
しかし、つい先日私も、扁平上皮癌の患者さんでEGFR遺伝子変異陽性の方に出会いました。
2002年に初めてgefitinibを使って著効した患者さんも、80歳くらいの扁平上皮癌のおじいさんでした。
検査をすることには副作用は有りませんし、かかるお金も全額自費だったとしても20000円ですので、1コース数十万円もかかる化学療法に着手する前にやっておくべきです。
最高の治療効果をあげるには、治療内容を決める根拠となる最高の診断が必要です。
診断に携わる医師にも、その後の治療にどのような選択肢があり、それを決めるためにどのような検査手法が必要なのか、確かな知識が不可欠です。
「診断がついてから紹介してね」「とりあえず癌の診断がついたから、あとはよろしく」といった態度は、医療の本質からもかけ離れているのではないでしょうか。
乳癌の一部には、細胞膜上にHER2という蛋白がたくさん存在します。
そういった患者さんに対し、化学療法に加えてハーセプチンを用いると、治療効果が高くなります。
2009年の米国臨床腫瘍学会で、進行胃癌でもHER2がたくさんあったら、ハーセプチンの併用により治療効果が高まることが報告され、2010年の9月に以下の如く論文化されました。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S014067361061121X
なぜこんな話を突然始めるかというと、そんな患者さんに遭遇したからです。
胃癌術後で、肺に異常陰影が出現したため気管支鏡下生検を行ったら、胃癌の肺転移ということになりました。
肺に病巣があっても、原因が胃癌である以上は、治療は胃癌に準じたものとなります。
一応私もがん薬物療法専門医の端くれですから、上記の報告の存在くらいは知っていました。
病理医には「この組織型ではHER2が陽性になる可能性はほとんどないよ」と危うく門前払いをくらいそうになりましたが、食い下がって気管支鏡下生検組織を調べてもらったら強陽性でした。
肺癌におけるEGFR遺伝子変異もそうですが、陽性になりやすい場合とそうでない場合があります。
しかし、「陽性になりやすい」ことと「陽性である」こと、「陽性になりにくい」ことと「陽性でない」ことは全く意味合いが異なります。
結果によって患者さんの予後が大きく変わるとなると、検査をしないことは罪ですらあるように思います。
非小細胞肺癌の領域では、喫煙者や扁平上皮癌の患者にはEGFR遺伝子変異検査は不要であるとの風潮が有ります。
しかし、つい先日私も、扁平上皮癌の患者さんでEGFR遺伝子変異陽性の方に出会いました。
2002年に初めてgefitinibを使って著効した患者さんも、80歳くらいの扁平上皮癌のおじいさんでした。
検査をすることには副作用は有りませんし、かかるお金も全額自費だったとしても20000円ですので、1コース数十万円もかかる化学療法に着手する前にやっておくべきです。
最高の治療効果をあげるには、治療内容を決める根拠となる最高の診断が必要です。
診断に携わる医師にも、その後の治療にどのような選択肢があり、それを決めるためにどのような検査手法が必要なのか、確かな知識が不可欠です。
「診断がついてから紹介してね」「とりあえず癌の診断がついたから、あとはよろしく」といった態度は、医療の本質からもかけ離れているのではないでしょうか。