2019年04月24日

PROCLAIM試験 シスプラチン+ペメトレキセド併用化学放射線療法は「あり」か?

 前回の記事で、MS58発表後の質疑応答で取り上げられたPROCLAIM試験。
 改めて見てみると、試験自体は早期無効中止となっている。

 「これ以上臨床試験を続けても、患者にとっての利益にならないので、途中で切り上げましょう」
ということで早期無効中止となった臨床試験結果を以て、シスプラチン+ペメトレキセド併用化学放射線療法を患者に勧めるのは、ありなのか。
 それって、根本的に間違っているのでは・・・?

・・・なんて、臨床試験原理主義者の立場で論じるつもりはない。
 全生存期間に関する統計学的な優越性はもちろん証明できなかった。
 早期無効中止なんて、臨床試験としては大失敗以外の何物でもない。
 しかし、全生存期間成績は標準治療と同等で、毒性がより軽かったのなら、実地臨床としてはありかも知れない。
 きちんとやろうと思えば、改めて全生存期間に関する非劣勢を証明して、副次評価項目として毒性が軽いことを示せばいいのだろうが、製薬会社はそんなことにお金はかけない。
 だって、そんなことしなくても、実地臨床でこの治療をやって、学会発表までしている先生がいるんだもの。
 そんなことしなくても、肺癌領域においてはペメトレキセドが製薬会社の稼ぎ頭であることは揺るぎない。

 要は、この試験結果をどのように解釈して、患者の治療に活かすか、ということだろう。
 PROCLAIM試験の結果を以て、患者にシスプラチン+併用化学放射線療法を進めるのは間違っている、と断じるのは簡単なこと。
 だけど、MS58を発表した病院で、この局所進行非小細胞肺癌患者の治療後5年生存割合が40%程度あったこと、一般にIV期の患者群においてシスプラチン+ペメトレキセド併用療法が頻用されていて、医療者がそのマネジメントに習熟しており安全に治療施行可能なこと、など、現実を冷静に見つめるならば、本治療は治療選択肢と考えていいような気がする。

 再燃時の治療としてペメトレキセドの選択肢を残しておきたい、という反対意見も当然あるだろう。
 それはそれでもちろん一理ある。




PROCLAIM: Randomized Phase III Trial of Pemetrexed-Cisplatin or Etoposide-Cisplatin Plus Thoracic Radiation Therapy Followed by Consolidation Chemotherapy in Locally Advanced Nonsquamous Non–Small-Cell Lung Cancer

Suresh Senan, et al.

Journal of Clinical Oncology 34, no. 9 (March 20 2016) 953-962. 2016



目的:
 第III相PROCLAIM試験は、A群:シスプラチン+ペメトレキセド併用化学放射線療法→ペメトレキセド維持療法とB群:シスプラチン+エトポシド併用化学放射線療法→地固め化学療法の全生存期間成績を比較する臨床試験である

対象と方法:
 IIIA / IIIB期の切除不能非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象とし、A群とB群に1:1の割合で割り付けた。A群ではシスプラチン+ペメトレキセド併用化学療法を3週ごと3コース、根治的胸部放射線療法(総線量60-66Gy)との併行で行い、その後ペメトレキセド維持療法を3週間ごとに4コース行った。B群ではシスプラチン+エトポシド併用放射線化学療法を4週ごと2コース、根治的胸部放射線療法(総線量60-66Gy)との併行で行い、その後地固めのプラチナ併用化学療法2コースを行った。主要評価項目は全生存期間とした。第一種の過誤を5%、検出力を80%、全生存期間に関するハザード比の有意水準を0.74とし、B群に対するA群の優越性を検証する試験デザインとした。

結果:
 本試験は早期無効中止となった。598人の患者を無作為割り付けし(A群301人、B群297人)、555人(A群283人、B群272人)が実際にプロトコール治療を受けた。全生存期間に関して、A群はB群に対して統計学的な優越性を示すことができなかった(ハザード比0.98、95%信頼区間は0.79-1.20、生存期間中央値はA群で26.8ヶ月、B群で25.0ヶ月、p=0.831)。A群ではGrade 3-4の有害事象が有意に少なく(64.0% vs 76.8%、p=0.001)、その中には好中球減少も含まれていた(24.4% vs 44.5%, p<0.001)。

結論:
 IIIA / IIIB期の切除不能非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象としたシスプラチン+ペメトレキセド併用化学放射線療法は、標準治療に対する優越性を示すことができなかった。


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