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2012年02月01日

サリドマイドと肺癌治療

サリドマイドといえば、催奇形性を有する制吐薬、睡眠薬として知られています。
胎児の四肢発育初期において、血管の成長を抑制する結果、短肢症を引き起こすと考えられています。
換言すれば、サリドマイドは血管新生を抑制する働きを持つということになり、基礎実験でも証明されています。
腫瘍医学の領域では、近年サリドマイドが多発性骨髄腫の標準治療薬として認知され、一般臨床で使用されています。

一方、肺癌診療の領域でもサリドマイドの有用性が検討されています。
今回紹介する論文は、放射線化学療法にサリドマイドを併用することで治療成績の向上を目指すものでしたが、残念ながら失敗に終わり、有害事象が増えるだけの結果となっています。

J Clin Oncol 30.Published Ahead of Print on January 23, 2012

Randomized Phase III Study of Thoracic Radiation in Combination With Paclitaxel and Carboplatin With or Without Thalidomide in Patients With Stage III Non–Small-Cell Lung Cancer: The ECOG 3598 Study

【目的】本研究の主目的は、切除不能のIII期非小細胞肺癌に対し、放射線化学療法にサリドマイドを併用するか否かで生命予後に差が出るかを検証することである。
【対象と方法】治療法をPC群(標準治療群):カルボプラチン6AUC+パクリタキセル225mg/m2,day1を2コース行い、その後カルボプラチン2AUC+パクリタキセル45mg/m2の毎週投与と計60Gyの放射線照射、あるいはTPC群(試験治療群):PC群に加え、サリドマイドを200mg/日から内服開始し、最大1000mg/日まで増量可能、のいずれかとし、参加者は(1)、(2)のいずれかに無作為に割り付けられた。
【結果】全体で546人の患者が適格で、275人がPC群に、271人がTPC群に割り付けられた。生存期間中央値、無増悪生存期間中央値、奏効割合はPC群でそれぞれ15.3ヶ月、7.4ヶ月、35%だった。一方TPC群ではそれぞれ16ヶ月、7.8ヶ月、38.2%と、PC群との比較で有意な差はなかった。一方、Grade 3の毒性はTPC群で高頻度であった。いくつかのGrade3以上のイベントはTPC群で頻度が高く、血栓塞栓症、疲労、うつ状態、めまい、感覚神経障害、振戦、便秘、呼吸困難、低酸素血症、低カリウム血症、皮疹、浮腫が見られた。低用量アスピリンを併用しても血栓塞栓症の頻度は低下しなかった。
【結論】局所進行非小細胞肺癌患者の放射線化学療法にサリドマイドを併用すると、毒性は増強するが生命予後は改善しなかった。

非小細胞肺癌で1件、小細胞癌で2件、サリドマイド併用化学療法の有効性に関する第III相臨床試験が行われていますが、いずれもnegative studyでした。
ベバシツマブを局所進行非小細胞肺癌、小細胞肺癌の放射線化学療法に併用する試みも成されましたが、高率に気管食道瘻を合併するため、禁忌と目されています。
腫瘍血管阻害薬と放射線化学療法は、相性が悪いようです。

ある意味特筆すべきは、本試験が開始された2000年の頃からサリドマイドが脚光を浴びていたということです。
足かけ7年かけて患者集積、それでも本試験は途中終了を余儀なくされており、局所進行非小細胞肺癌の大規模臨床試験を完遂することの難しさが垣間見えます。