2014年10月20日

B型肝炎ウイルス対策

 10年前に比べると、抗がん薬治療を始めるにあたって、準備しておかなければならないことが増えたような気がします。
 抗がん薬を調整する際の安全キャビネットの設置や防護服しかり。
 塩酸イリノテカンを使用する際のUGT1A1遺伝子多型検査しかり。
 胃がん、乳がんの治療をする際のHER2検索しかり。
 大腸がんの治療をする際のK-ras遺伝子変異検査しかり。
 肺がんの治療をする際のEGFR遺伝子変異検査、ALK遺伝子再構成検査しかり。
 ペメトレキセドを投与するにあたっての、1週間先行してのビタミンB12、葉酸投与もしかり。
 そして、今回取り上げる、B型肝炎ウイルス対策もまたしかり、です。

 B型肝炎ウイルスのスクリーニング検査として頻用されるHBs抗原検索では、その陽性例でステロイドの投与や化学療法により、B型肝炎ウイルスの急激な増殖(再活性化)が起こり、致死的な重症肝炎に至ることが報告されています。
 HBs抗原陰性であっても、HBc抗体やHBs抗体が陽性の場合、肝臓や末梢血単核球中でB型肝炎ウイルスの複製が持続する場合があることも知られています。
 そのため、「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」が公開され、現在は2011年版が最新版とされています。

 B型肝炎ウイルス対策

 実際にB型重症肝炎に至った経験があるかと言われればないのですが、C型肝炎ウイルスキャリアーの原発性腹膜腫瘍の患者さんが化学療法中に肝硬変に陥り、治療継続不可能になったのを目の当たりにしたことがあり、忘れられません。

 今回、他院から引き継いだ患者さんを調べてみると、HBc抗体、HBs抗体が陽性でした。
 ガイドラインに従って、B型肝炎ウイルスDNA定量を行い、適切に対処します。


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