抗がん薬治療における刺身・鮨との付き合い方
抗がん薬治療中は様々なストレスがつきものだが、食事は忘れてはならない重要な要素である。
骨髄抑制が起こっている間は、基本的に生ものはNGと話している。
ちょうど骨髄抑制がピークを迎えている頃、よせばいいのに鮨を食べて、急性腸炎を起こして緊急入院した方もいた。
・抗がん薬治療中は刺身を食べてはいけないのか
→
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e916639.html
じゃあ抗がん薬治療中の生もの接種はほんとに悪いのか?
根拠になるような論文はあんのか?
と聞かれると、正直言って困ってしまう。
あまりにも自明なことなためか、参考になりそうな論文を見つけきれなかった。
そんな中、多分こういうことなんだろうな、という論文を発見したので、書き残す。
旬な話題だと思う。
Clinical characteristics of seven patients with Aeromonas septicemia in a Japanese hospital
Yoshitomo Morinaga et al., Tohoku J Exp Med. 2011 Oct;225(2):81-4.
doi: 10.1620/tjem.225.81.
Aeromonas属は、河口や海洋の天然水に広く分布し、鞭毛を有するグラム陰性桿菌である。Aeromonas属は、とりわけ熱帯地方や亜熱帯の環境において、腸炎、菌血症といったさまざまな疾患を引き起こす。日本でのAeromonas属による菌血症の実態を調べるため、当院の過去の診療歴から患者の経過と検査データを抽出した。2000年から2010年までの11年間で、Aeromonas属による菌血症は7人発生しており、うち6人は女性だった。6人は夏から秋にかけての期間で発症していた。Aeromonas属による菌血症の発症割合は入院患者1000人当たり0.07人で、7人中2人は死亡していた。全ての患者に基礎疾患があり、7人中6人は悪性腫瘍、1人は胆石症を合併していた。2人は、海産物の生食後2日間以内に菌血症を発症していた。5人は入院後48時間以上経過してからAeromonas属による菌血症に進展していた。全ての患者で発熱が見られ、4人は敗血症性ショックに陥っていた。7人全てが、Aeromonas属単独感染による菌血症だった。Aeromonas hydrophilaが5人から、Aeromonas caviaeおよびAeromonas veronii biovarがそれぞれ1人ずつから単離された。薬剤感受性試験の結果、ほとんどの抗菌薬はこれら単離された菌種に対して抗菌活性があった。しかしながら、1人の患者では治療経過中にカルバペネム耐性株となり、死に至った。Aeromonas属による菌血症は温帯気候下では一般的でないが、それでも暖かい季節には発生しうる。免疫抑制状態にある患者が魚や貝を生食することは、Aeromonas属による菌血症を発症する重要な背景因子である。
関連記事