2013年度のデータベースをまとめてみた。
統計解析にはEZRを用いた。
1)患者背景
この時期に確定診断した患者は60人。
年齢中央値は74歳、最高齢は90歳。
男性は37人で、全体の62%を占めた。
組織型では腺がんが28人で、全体の47%を占めた。
小細胞がん、大細胞神経内分泌がんといった、いわゆる高悪性度神経内分泌腫瘍が全体の20%を占めている。
臨床病期別では、IA、IB期が少なく、IIIA、IIIB、IV期が多い年だった。
EGFR遺伝子変異陽性患者は8人、全体の13%を占めた。
また、初めてALK融合遺伝子陽性の患者に遭遇した年だった。
2)全体の生命予後
60人全員を対象とした生存曲線は以下の通り。
5年生存割合は29%、95%信頼区間は17-41%。
生存期間中央値は1.6年、95%信頼区間は1.3年-3.1年だった。
ちょうど2年のあたりで明らかに曲線の傾きが変わっている。
3)性別ごとの生命予後
ものの見事に曲線が重なっており、この年については男女の生命予後の差異は見られない。
4)組織型ごとの生命予後
腺がん>扁平上皮がん>小細胞がんという関係は例年通りだが、大細胞神経内分泌がんの生命予後はこの年は比較的良かった。
5)臨床病期ごとの生命予後
この年度は、IIIA期とIV期の患者が10人以上いるので、それぞれに関してデータを示しておく。
IIIA期は一般に手術もしくは化学放射線療法が選択される病気であり、根治の可能性がある。
一般には5年生存割合20-25%程度を見積もるべき病期と考えるが、今回対象となった10人では残念ながら5年間追跡調査できた患者が皆無だった。
4年生存割合は22%(95%信頼区間3.4-51.3%)、生存期間中央値は1.3年(95%信頼区間0.41年-未到達)だった。
IV期の患者では、5年生存割合は4.2%(95%信頼区間0.3-18%)、生存期間中央値は0.90年(95%信頼区間0.41-1.4年)だった。
6)EGFR遺伝子変異
この年度は、EGFR遺伝子変異陽性の患者数が少なかったうえ、生命予後もあまりパッとしなかった。
EGFR遺伝子変異陽性患者の5年生存割合は38%(95%信頼区間8.7-67%)、生存期間中央値は3.1年(95%信頼区間0.98年-未到達)。
EGFR遺伝子変異陰性患者の5年生存割合は28%(95%信頼区間16-41%)、生存期間中央値は1.5年(95%信頼区間1.0年-2.3年)だった。
p=0.419で有意差はつかなかった。
7)ALK融合遺伝子
なにせALK融合遺伝子陽性の患者が一人しかいないので、生存曲線は極めて品のないものになってしまった。
それでもインパクトのある図表になったので敢えてそのまま残す。
このALK融合遺伝子陽性患者の生存期間は、約6.5年だった。
IV期の患者だったことを考えると、たった一人とは言え、自信をもって予後良好だったと言えるのではないだろうか。