2013年度のデータベースから

tak

2021年05月25日 23:32

 2013年度のデータベースをまとめてみた。
 統計解析にはEZRを用いた。

1)患者背景

 この時期に確定診断した患者は60人。

 年齢中央値は74歳、最高齢は90歳。
 男性は37人で、全体の62%を占めた。

 組織型では腺がんが28人で、全体の47%を占めた。 
 小細胞がん、大細胞神経内分泌がんといった、いわゆる高悪性度神経内分泌腫瘍が全体の20%を占めている。

 臨床病期別では、IA、IB期が少なく、IIIA、IIIB、IV期が多い年だった。
 EGFR遺伝子変異陽性患者は8人、全体の13%を占めた。
 また、初めてALK融合遺伝子陽性の患者に遭遇した年だった。

2)全体の生命予後
 60人全員を対象とした生存曲線は以下の通り。

 5年生存割合は29%、95%信頼区間は17-41%。
 生存期間中央値は1.6年、95%信頼区間は1.3年-3.1年だった。
 ちょうど2年のあたりで明らかに曲線の傾きが変わっている。

3)性別ごとの生命予後

 ものの見事に曲線が重なっており、この年については男女の生命予後の差異は見られない。

4)組織型ごとの生命予後


 腺がん>扁平上皮がん>小細胞がんという関係は例年通りだが、大細胞神経内分泌がんの生命予後はこの年は比較的良かった。

5)臨床病期ごとの生命予後

 この年度は、IIIA期とIV期の患者が10人以上いるので、それぞれに関してデータを示しておく。
 IIIA期は一般に手術もしくは化学放射線療法が選択される病気であり、根治の可能性がある。
 一般には5年生存割合20-25%程度を見積もるべき病期と考えるが、今回対象となった10人では残念ながら5年間追跡調査できた患者が皆無だった。
 4年生存割合は22%(95%信頼区間3.4-51.3%)、生存期間中央値は1.3年(95%信頼区間0.41年-未到達)だった。
 IV期の患者では、5年生存割合は4.2%(95%信頼区間0.3-18%)、生存期間中央値は0.90年(95%信頼区間0.41-1.4年)だった。

6)EGFR遺伝子変異

 この年度は、EGFR遺伝子変異陽性の患者数が少なかったうえ、生命予後もあまりパッとしなかった。
 EGFR遺伝子変異陽性患者の5年生存割合は38%(95%信頼区間8.7-67%)、生存期間中央値は3.1年(95%信頼区間0.98年-未到達)。
 EGFR遺伝子変異陰性患者の5年生存割合は28%(95%信頼区間16-41%)、生存期間中央値は1.5年(95%信頼区間1.0年-2.3年)だった。
 p=0.419で有意差はつかなかった。

7)ALK融合遺伝子

 なにせALK融合遺伝子陽性の患者が一人しかいないので、生存曲線は極めて品のないものになってしまった。
 それでもインパクトのある図表になったので敢えてそのまま残す。
 このALK融合遺伝子陽性患者の生存期間は、約6.5年だった。
 IV期の患者だったことを考えると、たった一人とは言え、自信をもって予後良好だったと言えるのではないだろうか。

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