今日はごく個人的な追憶について書き留める。
もう2年も経っただろうか。
中学校まで同じ学校に通っていた同級生の女の子が、乳がんで亡くなったとの連絡を受けた。
この女の子とは不思議な縁があって、私とこの子を結ぶ線分を三角形の一辺として、2つの三角形が隣り合うような二重三角関係の間柄だった。
残る2つの頂点はどちらも同級生の男の子。
当然それぞれの辺はベクトルであるわけだが、ベクトルがどういう方向を向いていたのかまでは無粋なので書かずにおく。
結局こうした関係は私たちが別々の高校に進学してからも続いて、あることをきっかけに図らずも解消された。
高校を卒業してからはそれぞれが地理的に離れたこともあり、全く別々の人生を歩むことになった。
地元に帰ってきて診療していると、ふとしたきっかけで遠い昔に引き戻されることがある。
勤務先の病棟看護主任から、この女の子のお母さんが入院していることを教えられた。
もちろん、病棟看護主任は私とこの女の子の関係など、知る由もない。
とはいえ、お母さんの方ではこの女の子(娘)と私の関係は当然ご存じのはず。
私自身、当時はこちらのお宅にお邪魔したこともあるので、そのままにはできず、ご挨拶にお伺いした。
実に30年ぶり、おそらくはお宅にお邪魔したとき以来の邂逅だ。
「ご無沙汰しています。○○です。」
「病棟看護主任から、ご入院されていると伺ったのでご挨拶に参りました」
「あらぁ、わざわざ来てくださったのね。ありがとうございます」
「○○くんがこちらにお勤めなのは知ってたのよ」
「実は△△先生にかかりつけでね、いつかはお目にかかれるだろうと思っていたのだけど、なかなか縁がなくて」
「なんと、それは存じ上げず失礼しました」
「外来受診にお越しになっている曜日はちょうど私は病棟勤務の日で、接点がなかったのでしょうね」
「今回はどういういきさつで入院されたんですか?」
「いえね、山に栗拾いに行っていたら足を滑らせちゃって、1mくらいの高さからコンクリートの地面に落っこちちゃったの」
「頭は打つわ胸は打つわで、幸い頭の方は大したことなかったんだけど、肋骨を3-4本折っちゃってね」
「今月いっぱいで退院できるらしいんだけど・・・」
「それは災難でしたね」
「とはいえ、頭に大事なくてよかった」
「風邪の噂に、□□さんが他界されたと聞きました」
「そうね、もう2年も経つのよね」
「私もいまでは一人暮らしで、商売をたたもうかと思ってるんだけど、店を閉めると常連さんが自宅まで来ちゃうのでやめられないのよね」
・・・という感じで、ひとしきり世間話をして引き取った。
シンガーソングライターの大江千里をこよなく愛し、中学生の当時から自作の小説を執筆していた文学少女だった。
ちゃんとお母さんを守ってあげてよね。
できるお手伝いはするからさ。