Boehringer Ingelheim Lung Cancer Conference 2015(その3)

tak

2015年06月30日 01:19

 標記の講演会備忘録、さらに続き。

<非扁平上皮癌(EGFR遺伝子変異陰性、ALK遺伝子転座陰性)に対する治療戦略>
四国がんセンター 野上尚之先生
・CTLA4, PD-1, PD-L1に関する模式図・・・Ribas NEJM 2012 (366) 2517-2519

・がん免疫反応は車の運転にたとえられることが多い。
 1)抗原提示細胞とT細胞の相互作用
 腫瘍組織適合遺伝子複合体とがん抗原に対するT細胞受容体(TCR)の結合:新規異物抗原の認識:車にキーを差し込む
 細胞表面のB7蛋白に対するCD28の結合:免疫反応の活性化:アクセルを踏む
 細胞表面のB7蛋白に対するCTLA4の結合:過剰な免疫反応の抑制:ブレーキを踏む
 2)がん細胞とT細胞の相互作用
 腫瘍組織適合遺伝子複合体とがん抗原に対するT細胞受容体(TCR)の結合:がん免疫反応の開始:車にキーを差し込む
 細胞表面のPD-L1に対するPD-1の結合:がん細胞に対する免疫寛容(アネルギー):ブレーキを踏む
・免疫チェックポイント阻害薬は、CTLA4、PD-1、PD-L1に対する抗体で、ブレーキを壊してがん免疫反応を促進する。
・免疫チェックポイント阻害薬は、治療が終わった後も長く効果が続くことがある。
・Checkmate-017試験:肺扁平上皮癌二次治療におけるNivolumabとDocetaxelの第III相比較試験
→全生存期間、無増悪生存期間とも有意にNivolumabが優れていた。
→PD-L1の発現状況と効果には関連なし。

・Checkmate-057試験:肺非扁平上皮非小細胞肺癌二次治療におけるNivolumabとDocetaxelの第III相比較試験
→全生存期間は有意にNivolumabが優れていた。
→無増悪生存期間は有意差がつかなかった。
→どちらの生存曲線も、途中で交差していた。


→発表当時、さんざん物議をかもしたIPASS試験の無増悪生存曲線とよく似ている。
→IPASSは、EGFR遺伝子変異を有するsuper-responderと変異を有さないnon-responderが混在したために、Gefitinib群の初期は急速に曲線が下がり、non-responderの影響が消えてから変曲点を迎えて、曲線の傾きが緩やかになったと理解されている。

→そうすると、肺非扁平上皮非小細胞肺癌に対するNivolumab療法でも、super-responderを見分けるbiomarkerがありそう。
→腫瘍のPD-L1発現状況で治療効果が異なるようだが、PD-L1発現の評価方法が複雑で、ASCO2015の会場では不評だった。

→PD-L1高発現の腫瘍だと、全生存期間、無増悪生存期間ともに延長し、奏効割合も高い。
→しかし、PD-L1低発現でも、一部にsuper-responderが存在するため、他のbiomarkerが関与している可能性がある。

・KEYNOTE-001試験ではPembrolizumabについて検討されている。
→PD-L1の発現状況は、腫瘍細胞の50%以上が発現しているかどうかで区切ったところ、50%以上発現している腫瘍では全生存期間、無増悪生存期間は延長し、奏効割合も高かった。


・抗PD-L1抗体であるAtezolimumabの効果について検証したPOPLAR試験では、がん細胞のみならず、腫瘍組織に浸潤する免疫担当細胞のPD-L1発現状態についても検討している。
・CD8陽性T細胞の一部が抗PD-L1抗体で染色される→CD8陽性T細胞も一部はPD-L1を発現している。
・腫瘍細胞、免疫担当細胞いずれもPD-L1高発現の方が、Atezolimumabがよく効いていた。





・・・まだ終わりません。
続きは次回に。

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