非小細胞肺がんの周術期治療をどのように考えるか

tak

2021年09月04日 06:00

 先日から、訳あって留学生の入院担当医をしている。
 向こうもnon-native、こちらもnon-nativeで、ちょっとだけ日本語、ほとんど英語でのやり取りを余儀なくされている。
 頑張ってしゃべっているつもりだが、なかなかうまくいかない。
 今日は便秘に関するやり取りをするのにずいぶん苦労した。

 排便、便秘に関する英語の勉強をして、それから英語のwebinerで少しだけ肺がんの勉強をした。
 米国の識者が非小細胞肺がんの周術期治療をどのように考えるかの話をしていた。
 今年の主要学会で発表された以下の臨床試験を踏まえてのことだろう。

・IMpower010試験・・・術後補助化学療法におけるアテゾリズマブ
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e989861.html

・第III相CheckMate816試験・・・ニボルマブ併用術前化学療法により病理学的完全奏効割合が改善
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e987857.html

 症例検討の概要は以下の通り。
・65歳男性
・虚血性心疾患の既往あり
・脂質異常症あり
・喫煙歴:55 pack-year=1日20本を55年間=Brinkman Index 1100
・腎結石の精査中に、たまたま右肺下葉の腫瘤を指摘された
・CTでは、右肺下葉に45mm大の腫瘍があり、右肺門リンパ節の腫大も疑われた。
・PET-CTでは縦郭リンパ節や遠隔転移の所見はなかった
・頭部造影MRIでは明らかな中枢神経病変は見つけられなかった
・縦郭リンパ節生検では診断つかず
・外科切除の結果、原発巣は4.5㎝、右肺門リンパ節に2ヶ所転移を認めた

 この時点で、術後の治療戦略を考えるにあたり、どんなバイオマーカーを調べるかというのが最初の議論になっていた。
 ADAURA試験、IMpower010試験の結果を踏まえて、EGFR遺伝子変異とPD-L1発現は見ておきたい、というのが一致した見解だった。
 この点は、術後再発時に生検不可能な部位に再発すると生検できずバイオマーカー検索できない可能性があること、手術時のがん組織は固定や経年変化により適切なバイオマーカー検体として適さなくなる可能性があることから、手術後にできるだけのバイオマーカーを検索しておきたい私の見解とは異なる。

 実際に今回の患者のEGFR遺伝子変異、PD-L1発現を調べてみたところ、
・EGFR遺伝子変異:(-)
・PD-L1発現:25%
となっていたそうだ。

 EGFR遺伝子変異やPD-L1発現状態の如何に拠らず、適応のある患者にはプラチナ併用術後補助化学療法を行うのが大前提である。
 その上で、EGFR遺伝子変異陽性患者であれば、ADAURA試験の結果から、術後補助化学療法に引き続いてオシメルチニブを使用することにより、少なくとも無増悪生存期間の延長が期待できる。
・術後補助化学療法にもオシメルチニブ・・・ADAURA試験、「顕著な有効性」を示す
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e973395.html
・ADAURA試験
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e975874.html
・T.M.先生、ADAURA試験について語る
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e980042.html
・ADAURA試験サブグループ解析・・・術後補助化学療法の有無、病期別の解析結果
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e987128.html

 現時点では米国でも術後補助化学療法としてのアテゾリズマブは承認されていないが、IMpower010試験もプラチナ併用術後補助化学療法を行うことが前提なので、結局バイオマーカーに拠らず、実地臨床で行うべきことは変わらない。
 
 次のステップとして、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬が周術期治療として有効ならば、今度はプラチナ併用術後補助化学療法を省略できるかどうか、という検証が必要かもしれない。 
 ただし、試験デザインとしては非劣性試験が必要な上、製薬会社には何らメリットのない検証なので、実現はそう簡単ではないだろう。




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