ドライバー遺伝子異常検出におけるジレンマとmultiplex PCR

tak

2021年09月18日 06:00

 非小細胞肺がんの診療において、ドライバー遺伝子異常、PD-L1陽性割合といったバイオマーカー評価の重要性は論を俟たない。
 どちらも様々な手法で調べられてきて、1薬剤につき1コンパニオン検査での診断しか認めないという不毛極まりない時期があったが、少しずつ実態に即してきている感がある。
 とは言え、まだまだ最適化されたとはいいがたい。

 ドライバー遺伝子変異検索においては、個別のドライバー遺伝子異常をPCR検査を用いて検出する方法と、次世代シーケンサー(NGS)を用いてまとめて調べる方法がある。
 前者は高感度だが、基本的には1遺伝子異常につき1検査という対応関係があるので、EGFR、ALK、ROS1、BRAF、RET、MET14skipと調べようとしたら6回分の生検組織量と手間とお金がかかる。
 出現頻度1%のドライバー遺伝子変異に組織と手間とお金をかけるのかと思うと、すぐには気が進まない。
 効率的に、頻度の高いものから調べたくなるのが人情だが、そうしていると稀な遺伝子異常を検出したくなったときには生検組織がなくなっていた、ということは起こりうる。
 NGSを使えば全部まとめて調べられるからいいんじゃないか、と言われそうだが、そもそもNGSでの検索には相応の量の生検組織が要求される。
 そして、PCRに比べると検査感度は劣る。
 NGSで陰性、PCRでEGFR遺伝子変異陽性だったという話はちらほら耳にする。

 そんななか、中国のAmoy DiagnosticsのAmoyDx Multi-Gene Mutations Detection Kitについて、理研ジェネシス社が製造販売承認を取得したようだ。
 2021/06/25付で(EGFR, ALK, ROS1, BRAF)、さらに2021/08/12付でMETエクソン14スキッピング変異が追加され、5種の遺伝子変異を1つの検査で、それも高感度のPCRベースで検出できるようになる見通しだ。
https://www.rikengenesis.jp/information/press.html

 この検査が一般的に使われるようになると、稀な遺伝子異常も検出されやすくなるだろう。
 本検査キットは、9種(EGFR, KRAS, BRAF, NRAS, HER2, PIK3CA, ALK, ROS1, RET)の変異を同時に検索できるので、いずれはRETに対するセルペルカチニブ、KRAS G12Cに対するSotorasib、HER2に対するT-DM1といった組み合わせに対し、本検査もコンパニオン診断として追加承認申請されるかもしれない。
http://www.amoydiagnostics.com/productDetail_35.html 

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