デュルバルマブが関わる臨床試験は、海洋に関わるコードネームが様々ついている。
PACIFIC(太平洋)。
CASPIAN(カスピ海)。
MYSTIC(コネチカット州の港町)
そして今回のPOSEIDON(海洋神)。
デュルバルマブは抗PD-L1抗体、Tremelimumabは抗CTLA-4抗体なので、POSEIDON試験の比較対象としてはCheckMate9LA試験を挙げるのがいいのだろう。
・ニボルマブ+イピリムマブ±プラチナ併用化学療法 適応追加
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http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e982891.html
臨床試験の規模は各群340-360人程度でほぼ同等。
無増悪生存期間中央値(95%信頼区間)はD+T+CT併用療法で6.2ヶ月(5.0-6.5)、CheckMate9LAレジメンで6.8ヶ月(5.5-7.7)でほぼ同等。
生存期間中央値(95%信頼区間)はD+T+CT併用療法で14.0ヶ月(11.7-16.1)、CheckMate9LAレジメンで14.1ヶ月(13.2-16.2)でほぼ同等。
さあ、ではどっちを選ぶ?と言われると、私を含めて多くの医師は、治療が楽な方を選ぶだろう。
D+T+CTは化学療法を含む導入療法が3週ごとに④コース、⑤コース目はD+T、⑥コース目以降はDのみ4週ごとに繰り返し。
CheckMate9LAレジメンは導入療法が3週ごとに②コース、その後は3週ごとにニボルマブ、6週ごとにイピリムマブが入っていく。
後者の方が幾分シンプルだろうか。
あと、細かいことを敢えて言うならば、POSEIDON試験におけるD+T+CT併用療法の有効性は、あくまで条件付き副次評価項目の位置づけである。
Durvalumab ± Tremelimumab + Chemotherapy as First-line Treatment for mNSCLC: Results from the Phase 3 POSEIDON Study
Melissa L Johnson et al., WCLC2021 Abst.#PL02.01
背景:
PD-1 / PD-L1経路を治療標的とした免疫療法は、単剤療法として、そして化学療法との併用療法として、進行非小細胞肺癌(mNSCLC)の治療を変貌させた。POSEIDON試験はランダム化オープンラベル国際共同第III相試験であり、mNSCLCに対する初回治療として担当医が自由選択による化学療法とデュルバルマブ、トレメリムマブを併用することの意義を問うものである。
方法:
未治療、EGFR / ALK遺伝子異常陰性のmNSCLC患者を1:1:1の割合で以下の治療群に割り付けた。D+CT群:デュルバルマブ1500mg+化学療法を3週ごとに4サイクル行い、引き続いてデュルバルマブ1500mgを4週間に1サイクル、病勢進行に至るまで継続する。D+T+CT群:デュルバルマブ1500mg+トレメリムマブ75mg+化学療法を3週ごとに最高4サイクルまで行い、続いてデュルバルマブ+トレメリムマブを1サイクル行い、その後はデュルバルマブを4週間に1サイクル、病勢進行に至るまで継続する。CT群:化学療法を3週ごとに最高6サイクルまで行う。化学療法の選択肢は、非扁平上皮がん患者に対するプラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法(ペメトレキセドの維持療法は許容する)、扁平上皮がん患者に対するプラチナ製剤+ジェムシタビン併用療法、全ての組織型に対するカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法のいずれかとした。割付調整因子は、腫瘍細胞のPD-L1発現割合(50%以上 vs 50%未満)、臨床病期(IVA期 vs IVB期)、組織型とした。主要評価項目は独立効果判定委員会によるRECIST ver.1.1準拠の無増悪生存期間(PFS)、CT群に対するD+CT群の全生存期間(OS)とし、いずれかの優越性が示されたらCT群に対するD+T+CT群のPFS、OSを副次評価項目として解析することとした。安全性評価は割り付けられた治療群に沿って行った。PFSに関するデータカットオフは2019年7月24日、OSと安全性に関するデータカットオフは2021年3月12日とした。
結果:
1013人の患者が無作為割付された。28.8%の患者でPD-L1発現が50%以上で、49.6%の患者がIVB期で、36.9%の患者が扁平上皮がんだった。担当医が選択した化学療法は、各治療群間で偏りがなかった。CT群に対して、D+CT群では有意にPFSが延長していたが、OSは有意水準に至らなかった。CT群に対して、D+T+CT群はPFS、OSともに有意に延長した。Grade 3 / 4の治療関連有害事象は、D+T+CT群の51.8%、D+CT群の44.6%、CT群の44.4%に認められた。有害事象によりプロトコール治療中止に至った患者は、D+T+CT群の15.5%、D+CT群の14.1%、CT群の9.9%に上った。
結論:
POSEIDON試験において、D+T+CT併用療法はCT療法に対して統計学的有意にmNSCLC患者のPFSとOSを延長した。同様に、D+CT併用療法はCT療法に対して有意にPFSを延長したが、OSの延長は統計学的有意水準に至らなかった。安全性プロファイルは各治療群間において同様であり、新規の有害事象は認めなかった。治療中断に至る割合はD+T+CT併用療法とD+CT併用療法の間で同様だった。D+T+CT併用療法はmNSCLCに対する初回治療の選択肢の一つとなるかもしれない。