2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録
以前、ベバシズマブが登場したときにもこんな話題があった。
薬が使えるようになったのはいいけれど、果たしてどのくらいの患者が治療対象となるのか。
今回は、局所進行非小細胞肺癌に対してプラチナ併用化学放射線療法を行った患者で、果たしてどの程度デュルバルマブの治療対象になる人がいるのか、といった検討だった。
プラチナ併用化学放射線療法を行った患者73人のうち、デュルバルマブ治療対象となるのは61人(70%)だったとのこと。
なお、本邦におけるデュルバルマブの治療適応は「切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法」と定められている。
高齢者における局所進行非小細胞肺癌に対する本邦の標準治療であるカルボプラチン単剤分割投与併用化学放射線療法の患者も対象となり得る。
今回の発表では、併用する化学療法レジメンにシスプラチン+ペメトレキセド併用療法が多かったようで、それについて会場から質問が飛んでいた。演者はPROCLAIM試験に基づいてシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を頻用していると話していた。第III相PROCLAIM試験はシスプラチン+ペメトレキセド併用化学放射線療法がシスプラチン+エトポシド併用化学放射線療法に対する優越性を証明できなかったnegative studyである。デュルバルマブの有効性の論拠となる第III相PACIFIC試験においてもプラチナ製剤+ペメトレキセド併用化学放射線療法は全体の4%程度にしか用いられていない。
局所進行非小細胞肺癌の化学放射線療法後5年生存割合が約40%というのは、立派な治療成績だ。
〇MS58 当科における切除不能III期非小細胞肺癌に対する根治的化学放射線療法の治療成績と、デュルバルマブによる地固め療法が対象となる割合の後方視的検討
・2011年01月から2018年05月までに切除不能III期非小細胞肺癌に対して根治的化学放射線療法を行った81人の患者を対象に検討した
・どの程度の患者がデュルバルマブを使用可能な対象となるかを調べた
・患者背景は以下の通り
・プラチナ併用化学療法を含む治療を受けたのは73人(90%)
・73人中54人(74%)が経過中に放射線肺臓炎を合併し、73人中12人(16%)は化学放射線療法後3ヶ月以内にGrade 2以上の放射線肺臓炎を発症し、デュルバルマブ治療対象外と考えられた
・PS不良のためデュルバルマブ治療対象外と考えられた患者は73人中7人(10%)
・病勢進行のためデュルバルマブ治療対象外と考えられた患者は73人中3人(4%)
・結局、デュルバルマブ治療対象外の患者は73人中22人(30%)
・残る70%はデュルバルマブ治療対象になり得ると考えられた
・全体の無増悪生存期間中央値は10.9ヶ月
・5年無増悪生存割合は21.3%
・Best Supportive Careに移行し(転院して追跡不能になった)患者を打ち切り例として扱うと、生存期間中央値は57.8ヶ月、5年生存割合は45.9%
・Best Supportive Careに移行し(転院して追跡不能になった)患者を死亡例と同様に扱うと、生存期間中央値は26.8ヶ月、5年生存割合は38.3%