進行非小細胞肺がんに対する治療をしていて、新たに胸水や腹水が出てきたときは、気落ちする。
たいていの場合はがん性胸水、がん性腹水による病勢進行と考えられるから。
とはいえ、進行非小細胞肺がんの治療中に腹水貯留で困ることは、経験上あまりない。
それだけに、消化器がんや婦人科がん、あるいは非代償期肝硬変で腹水がパンパンにたまっている患者を見ると、呼吸器内科医としてはちょっとしたカルチャーショックだ。
ラムシルマブ+ドセタキセル併用療法後、もとの病巣が縮小したまま、胸水・腹水が急速に貯留した患者の症例報告を見かけた。
それぞれ穿刺して調べたところいずれも乳糜様であり、ラムシルマブ+ドセタキセル併用療法を中止したところ増えなくなったとのこと。
薬物療法を完全に中断して4ヶ月経過を見るのは勇気がいるが、本治療中に他の病巣が安定しているにも関わらず胸水・腹水のみが増えるというときには鑑別に挙げる価値がある。
とはいえ、治療変更が必要なのは変わらないが。
Simultaneous chylous ascites and chylothorax during ramucirumab plus docetaxel chemotherapy in a patient with non-small lung cell cancer
Makoto Arai et al., Int Cancer Conf J. 2019 Jul; 8(3): 114–117.
Published online 2019 Feb 25.
doi: 10.1007/s13691-019-00366-6
今回報告する患者は、非小細胞肺がん(腺癌、cT1aN3M1b)と診断された69歳の女性である。過去に手術歴、或いは腹部外傷歴はない。診断確定後、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ併用療法を4コース、続いて38コースのベバシズマブ維持療法を受けた。その後、病勢進行が確認され、ラムシルマブ+ドセタキセル併用療法を3週間ごとに行った。8コース終了時点で造影CTを撮影したところ部分奏効が確認されたが、同時にGrade 2の蛋白尿が出現した。そのため、治療間隔を3週間から4週間に引き延ばした。それから4週後、腹部膨満感と末梢浮腫が出現し、2か月間で体重が18kg増加した。そのためラムシルマブ+ドセタキセル併用療法は中止した。再度造影CTを撮影したところ、大量の両側胸水と腹水を認めたものの、中心静脈路やリンパ管の閉塞所見は認めなかった。腹水試験穿刺を行ったところ、白色、乳液状の性状を示しており、527mg/dlと高濃度の中性脂肪を含んでいた。加えて、胸水穿刺を行っても同様の白色、乳液状の性状を示した。ラムシルマブ+ドセタキセル併用療法中止後は腹水、胸水ともに増加しなかった。治療中止から4か月後の時点でも、部分奏効の状態を維持しており、腹水、胸水の増加は見られなかった。乳糜腹水、乳糜胸水はラムシルマブ+ドセタキセル併用療法が原因だったのかもしれない。