髄膜癌腫症と姑息的全脳全脊髄放射線照射

tak

2021年09月02日 06:00

 ときどき、髄膜癌腫症に対して全脳全脊髄放射線照射という治療が行われることがある。
 転移性脳腫瘍に対する全脳照射は一般的な治療だが、肺がん領域で全脳全脊髄照射をする例はあまり見たことがない。
 1年くらい前だったか、がんセンターに勤める医師に髄膜癌腫症の治療について意見を求めたところ、全脳全脊髄照射をしてみては、という答えが返ってきた。
 
 どの程度の治療効果が期待できるのか、ちょっと文献の要約をかじってみた。
 全脳全脊髄照射にそれほど劇的な効果が期待できるわけではない。
 例外的に、61.5ヶ月以上の長期生存が得られている非小細胞肺がん患者がいたが、詳細に書かれていないものの、おそらくはドライバー遺伝子変異を有する患者だろう。
 髄膜癌腫症を発症してからの平均的な生命予後は1.5-5ヶ月、予後のよい患者でも7-8ヶ月程度の生命予後である。
 今回取り上げた2件の文献は、いずれも全脳全脊髄照射の有効性を統計学的に証明したものではないので、これを以て本治療を積極的に進める根拠にはならない。
 正直言って、労多くして益少なし、という印象を受けた。
 とはいえ、もし本治療を検討するときには、治療に期待できる効果を患者に指し示すにあたっては参考になるデータだろう。



Craniospinal irradiation(CSI) in patients with leptomeningeal metastases: risk-benefit-profile and development of a prognostic score for decision making in the palliative setting

Michal Devecka et al., BMC Cancer. 2020 Jun 1;20(1):501.
doi: 10.1186/s12885-020-06984-1.

背景:
 本研究の目的は、髄膜癌腫症(leptomeningitis, LM)を合併した患者に対して全脊髄照射あるいは全脳全脊髄照射(CranioSpinal irradiation,CSI)を行った際の忍容性、治療効果を調べることと、どんな背景を持つ患者が本治療の恩恵を受けるのか予測可能なスコアリングシステムを提案することである。

方法:
 我々の施設でCSIを施行した19人の患者を評価対象とした。患者背景、がん原発巣の状態、CSIによる治療効果と毒性を後方視的に検討した。中枢神経系以外の病状は、CSI施行前に行った病期判定時のCTで評価した。患者のPSや臨床病期に基づいた層別化によりスコアリングシステムを作成し、治療効果予測を行った。

結果:
 全生存期間に関する経過観察期間中央値は3.4ヶ月(0.5-61.5)だった。生存期間中央値は、LM合併乳がん患者で4.7ヶ月、LM合併非小細胞肺がん患者で3.3ヶ月だった。非小細胞肺がん患者は5人含まれていて、それぞれの生存期間中央値は1.5ヶ月、1.5ヶ月、3.3ヶ月、4.2ヶ月、61.5ヶ月だった。①KPS

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