2020年世界肺癌会議で、LIBRETTO-001試験における東アジア人患者の解析データが示されていた。
全体集団の解析結果と比べて、腫瘍縮小効果はほぼ同等、有害事象とそれに基づく治療中断は軽微、という有望な結果だった。
全体集団の解析結果は以下を参照。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e982216.html
FP14.10 - Efficacy and Safety of Selpercatinib (LOXO-292) in East Asian Patients with RET Fusion-Positive NSCLC
Herbert H Loong et al., WCLC 2020 #FP14.10
背景:
selpercatinibは高い選択性と潜在活性を持つ、中枢神経系病変にも有効な、経口RET阻害薬である。今回は、LIBRETTO-001試験の初期評価対象患者のうち、東アジア人患者集団に関する有効性と安全性について検討した。規制当局の同意のもと、初期評価対象患者は臨床試験開始初期に登録されたプラチナ併用化学療法既治療患者連続105人と定義された。
方法:
RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者が国際多施設共同第I / II相LIBRETTO-001試験に登録された。総計16か国からの89施設が参加したが、初期評価対象患者のうち自己申告に基づくアジア人患者は7か国23施設から登録されていた(日本:12人、韓国:11人、シンガポール:5人、香港:5人、米国:5人、オーストラリア:1人、フランス:1人)。用量漸増試験である第I相部分に引き続き、対象患者は第II相部分での推奨用量(160mg経口投与を1日2回、28日を1サイクルとして服用)で治療を受けた。主要評価項目は委員会判定によるRECIST 1.1準拠の奏効割合とした。副次評価項目は、奏効持続期間と安全性とした。今回報告する内容は、2019年12月16日のデータカットオフ時点における、初期評価対象患者のうちの東アジア患者集団に関するデータである。
結果:
40人の東アジア人初期評価対象患者を解析した。60%が女性、年齢中央値は56歳(範囲は35-80歳)、95%の患者はECOG-PS 0-1だった。RET融合遺伝子のパートナーはKIF5Bが57.5%、CCDC6が15.0%、NCOA4が2.5%、その他が25%だった。全ての患者に前治療歴があり、プラチナ併用化学療法は100%、マルチキナーゼ阻害薬は52.5%、抗PD-1 / PD-L1抗体は57.5%だった。前治療のレジメン数中央値は3.0(範囲は1-15)だった。主要評価項目である奏効割合は60.0%(95%信頼区間は43.3-75.1%、n=24/40)だった。奏効持続期間中央値は、追跡期間中央値12ヶ月の段階で未到達だった。東アジア人患者集団全体(n=136)におけるselpercatinibの安全性解析では、患者の15%以上で観察された治療関連有害事象としてALT / AST高値、口渇、高血圧、下痢、血清クレアチニン値上昇、心電図におけるQT延長、血小板減少、末梢性浮腫、発疹が見られた。治療関連有害事象のためselpercatinibを中止した患者は、東アジア人集団136人のうち2人(1.5%)のみだった。
結論:
今回対象となった濃厚な前治療歴を有するRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がんの東アジア人患者において、selpercatinibによる治療は顕著かつ持続的な効果を示し、忍容性も良好であることが示され、LIBRETTO-001試験に関する既報と合致していた。新規の毒性所見は認めなかった。