高齢者局所進行非小細胞肺癌

tak

2012年09月04日 16:07

手術はできないけれど、遠隔転移もない。
そんな非小細胞肺癌を、一般に局所進行非小細胞肺癌と称します。
内科で対応する肺癌の中でも、治癒を目指せる病態であり、主治医の力量が問われます。
70歳以下の患者さんでは放射線化学療法が標準治療とされています。
併用する治療はシスプラチン+ドセタキセル、シスプラチン+ビノレルビン、カルボプラチン+パクリタキセルが一般的です。
これらの治療で報告されている生存期間中央値は大体20-25か月といったところでしょうか。
シスプラチン+TS-1、シスプラチン+ペメトレキセドと放射線治療の併用も、開発段階ですが有望視されています。

一方で、70歳以上の高齢者では、長らく放射線治療単独が標準治療とされてきました。
しかし、低用量カルボプラチン併用放射線化学療法が昨年来JCOGより報告されており、有望な結果が示されています。
同様のコンセプトでの臨床試験は当面計画されないでしょうから、本治療は高齢者局所進行非小細胞肺癌の日本での標準治療と位置付けていいでしょう。
この7月に論文化されましたので以下にリンクを記載します。

Thoracic radiotherapy with or without daily low-dose carboplatin in elderly patients with non-small-cell lung cancer: a randomised, controlled, phase 3 trial by the Japan Clinical Oncology Group (JCOG0301)
Dr Shinji Atagi MD a , Masaaki Kawahara MD b, Akira Yokoyama MD c, Hiroaki Okamoto MD d, Nobuyuki Yamamoto MD e, Yuichiro Ohe MD f, Toshiyuki Sawa MD g, Satoshi Ishikura MD h, Taro Shibata MSc i, Haruhiko Fukuda MD i, Nagahiro Saijo MD j, Tomohide Tamura MD k, on behalf of the Japan Clinical Oncology Group Lung Cancer Study Group
http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(12)70139-0/abstract

【背景】高齢者局所進行非小細胞肺癌患者における放射線化学療法が予後を改善するかどうかはわかっていない。本試験の目的は高齢者局所進行非小細胞肺癌に対してカルボプラチン併用放射線化学療法が放射線単独療法に比して生命予後を伸ばすかどうかを調べることである。
【方法】本試験はJCOG0301と銘打たれたランダム化第III相臨床試験である。70歳以上の切除不能III期脾小細胞肺癌患者を放射線化学療法群(60Gyの胸部放射線照射+同時併用低用量カルボプラチン(30mg/平米/日、週5回、計20日間投与))と放射線単独療法群(60Gyの胸部放射線照射)に無作為に割り付けた。割り付け調整因子はECOG-PS(PS0 vs 1 vs 2)、臨床病期(IIIA期 vs IIIB期)、治療施設とした。主要評価項目は全生存期間とした。本試験は2回目の中間解析の結果、早期に中止された。
【結果】200人の患者が2003年9月1日から2010年5月27日までに登録され、100人が放射線化学療法群、100人が放射線量単独療法群に割り付けられた。患者集積完遂から10ヶ月後に2回目の中間解析を行った。この時点での追跡期間中央値は19.4か月だった。あらかじめ規定した試験中止基準に従い、JCOG効果安全性評価委員会は放射線化学療法群の優位性が担保されたとして試験の早期中止と結果公表を勧告した。放射線化学療法群と放射線単独療法群の生存期間中央値はそれぞれ22.4ヶ月(95%信頼区間は16.5ヶ月-33.6ヶ月)、16.9ヶ月(13.4ヶ月-20.3ヶ月)であった(ハザード比は0.68、95.4%信頼区間は0.47-0.98、ログランク検定におけるp値=0.0179)。放射線化学療法群におけるgrade 3-4の骨髄抑制は放射線単独療法群より優位に多くみられ、白血球減少は61人(63.5%)vs 0人、好中球減少は55人(57.3%) vs 0人、血小板減少は28人(29.2%) vs 2人(2.0%)であった。grade 3-4の肺臓炎および晩期肺毒性の頻度は両群間でほぼ同様であった。全体で7人の治療関連死を認め、放射線化学療法群で3人(3.0%)、放射線単独療法群で4人(4.0%)であった。
【結論】高齢者局所進行非小細胞肺癌患者の一部(本治療の適格基準を満たすような患者)においては、放射線化学療法は放射線単独療法よりも優れた治療効果を示し、治療選択枝として考慮すべきである。

 高齢者進行非小細胞肺癌の標準治療がドセタキセル単独療法であることが近年JCOG / WTOGの臨床試験で示されましたが、それに続く本邦発の高齢者非小細胞肺癌のエビデンスで、臨床の現場にすぐに反映できる優れた試験結果だと思います。

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