地域高齢化社会

tak

2011年01月01日 08:50

あけましておめでとうございます。

私が関東のがん診療専門病院での修行を終え、大分に帰ってきてもう3年が過ぎようとしています。
良くも悪くも診療内容の違いをさまざまな面で感じていますが、患者さんの年齢も大きな違いです。
病院を受診した患者さんを年齢ごとに並べて、ちょうど真ん中に来る人の年齢を「年齢中央値」といいます。
前勤務先では68歳、現勤務先では72歳と、ほぼ5歳の開きがあります。

そういった事情から、「高齢者」の定義は地域や国によって異なります。
昨年の日本肺癌学会での議論では、国立がん(研究)センター中央病院の医師は70歳以上、地方の内科医は75歳以上、地方の外科医は80歳以上と答えていました。
それぞれの医師には思い描く高齢者のイメージがあるはずです。
国立がん(研究)センター中央病院の医師は「臨床試験の対象になりにくい、何らかの合併症を抱えていそうな人」。
地方の内科医は「日頃診療をしていて、大体このくらいの年齢だとお年寄りという感じがする」。
地方の外科医は「標準的手術が出来そうな限界の年齢」。
こんなイメージを、それぞれ持っているのだと思います。

標準的な治療を決めるために、患者さんに協力していただいて新しい治療にチャレンジすることを「臨床試験」といいます。
ほとんどの臨床試験は、「非高齢者」を対象としたものです。
多くの臨床試験ががんセンターや大都市圏の病院で行われていることを考えると、70歳以上の患者さんが置き去りにされていることを否めません。
こと現勤務先で考えるなら、患者さんの半数以上は臨床試験から得られた結果の恩恵を受けられないことになります。

さまざまな合併症を抱えた高齢者の肺癌治療をどう開発していくのか。
これが、地方で診療をする専門医に課せられた課題のひとつだと思っています。
新年から始められるべく、当院と関連施設を受診する患者を対象に、小規模ながら大分独自の臨床試験を計画中です。

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