IMpower 133試験のupdated data。
アテゾリズマブの上乗せ効果は、全生存期間で2か月、無増悪生存期間で1ヶ月と見ていいだろう。
コストに見合った生存期間延長効果なのかどうかは、各自の判断で。
現在治療している患者に使うかどうか悩んだが、限局型が病勢進行により進展型に変わったから、三次治療だけどアテゾリズマブを上乗せしました、という言い訳は通用しないだろうと思ったので、使用を見合わせた。
結論にはPD-L1の発現状態やbTMBスコアによらずアテゾリズマブの上乗せ効果あり、という結論だったが、PD-L1≧5%、bTMBスコア≧16ならば、より生存期間延長効果が期待できるように感じられた。
治療効果予測因子として有用なのではないだろうか。
ネット上で海外の識者のコメントを見ていたら、以下のような点に言及されていた。
アテゾリズマブを上乗せする意義は、維持療法に入ってから大きくなる、ということだろうか。
・CEA群、CEP群ともに、維持療法まで移行できた患者は80%程度いた
・維持療法に移行できるかどうかに関連する因子は年齢とPS
・維持療法に移行できた患者についてのみ検討すると、全生存期間はCEA群で15.7ヶ月、CEP群で11.3ヶ月
・維持療法に移行できた患者について、維持療法開始後の全生存期間はCEA群で12.5ヶ月、CEP群で8.4ヶ月
Updated Overall Survival and PD-L1 Subgroup Analysis of Patients With Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer Treated With Atezolizumab, Carboplatin, and Etoposide (IMpower133)
Stephen V. Liu, et al.
Journal of Clinical Oncology 39, no. 6 (February 20, 2021) 619-630.
DOI: 10.1200/JCO.20.01055
The ASCO Post, 2021/01/29
背景:
IMpower133試験は、ランダム化二重盲検第I/III相試験であり、進展型小細胞肺がんの患者に対する初回治療として、カルボプラチン+エトポシド併用療法にアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)を上乗せすることによって有意な全生存期間、無増悪生存期間延長効果が得られることを示した。今回は全生存期間、病勢進行時の経過、安全性、バイオマーカーに関する探索的検討(PD-L1、血液サンプルによるtumor mutational burden(bTMB))について最新のデータを報告する。
方法:
未治療の進展型肺小細胞がん患者を対象に、1:1の割合でカルボプラチン(5AUC、day1)+エトポシド(100mg/㎡、day1,2,3)+アテゾリズマブ(1,200mg、day1)併用療法(CEA群)とカルボプラチン(5AUC、day1)+エトポシド(100mg/㎡、day1,2,3)+偽薬併用療法(CEP群)に無作為に割り付けた。治療は21日間隔で4コース行い、その後はアテゾリズマブもしくは偽薬の維持療法に移行し、忍容不能な毒性、病勢進行、あるいは臨床的有用性の喪失のいずれかのイベントが発生するまでは継続することとした。本試験に際し、腫瘍組織サンプルを参加患者から回収したが、試験登録に際してPD-L1発現状態は要求されなかった。主要評価項目は2つあり、担当医評価による無増悪生存期間および全生存期間とされ、中間解析時点で統計学的に有意な差が認められた。全生存期間の無増悪生存期間の追跡調査、探索的なバイオマーカー分析が計画された。
結果:
患者総数は403人で、CEA群に201人、CEP群に202人が割り付けられた。
中間解析時点では、観察期間中央値は13.9ヶ月で、全生存期間中央値はCEA群で12.3ヶ月、CEP群で10.3ヶ月(ハザード比0.70、p=0.007)、無増悪生存期間中央値はCEA群で5.2ヶ月、CEP群で4.3ヶ月(ハザード比0.77、p=0.02)だった。
最新の解析時点で、全生存期間に関する観察期間中央値は22.9ヶ月(CEP群で23.1ヶ月、CEP群で22.6ヶ月)、この間に全体のうち302人の患者が死亡した。全生存期間中央値はCEA群で12.3ヶ月(95%信頼区間は10.8-15.8ヶ月9、CEP群で10.3ヶ月(95%信頼区間は9.3-11.3ヶ月)(ハザード比0.76、95%信頼区間は0.60-0.95、p値は0.0154)だった。12ヶ月生存割合はCEA群で51.9%、CEP群で39.0%、18カ月生存割合はCEA群で34.0%、CEP群で21.0%だった。無増悪生存期間中央値はCEA群で5.2ヶ月、CEP群で4.3ヶ月(ハザード比0.77、95%信頼区間は0.63-0.95)だった。奏効割合はCEA群で60.2%、CEP群で64.4%(p=0.3839)、奏効持続期間はCEA群で4.2ヶ月、CEP群で3.9ヶ月(ハザード比0.67、95%信頼区間0.51-0.88)だった。
臨床試験に参加した計403人の患者のうち、137人でPD-L1発現状態を評価可能だった。腫瘍細胞もしくは腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1発現状態により、PD-L1発現<1%の患者集団、≧1%の患者集団、≧5%の患者集団それぞれで生存期間中央値を比較したところ、<1%の患者集団ではCEA群で10.2ヶ月、CEP群で8.3ヶ月(ハザード比0.51、95%信頼区間は0.30-0.89)、≧1%の患者集団ではCEA群で9.7ヶ月、CEP群で10.6ヶ月(ハザード比0.87、95%信頼区間は0.51-1.49)、≧5%の患者集団ではCEA群で21.6ヶ月、CEP群で9.2ヶ月(ハザード比0.60、95%信頼区間は0.25-1.46)だった。
臨床試験に参加した計403人の患者のうち、346人でbTMBが評価可能だった。bTMBスコアのカットオフ値を10、16に設定して検討した。bTMBスコア10未満と10以上の患者集団でECA群とCEP群の全生存期間に関するハザード比を算出したところ、それぞれ0.73(95%信頼区間は0.49-1.08)および0.73(95%信頼区間は0.53-1.00)だった。同様に、bTMBスコア16未満と16以上の患者集団でECA群とCEP群の全生存期間に関するハザード比を算出したところ、それぞれ0.79(95%信頼区間は0.60-1.04)および0.58(95%信頼区間は0.34-0.99)だった。
PD-L1発現状態、bTMBの状態にかかわらず、CEA群の方が予後良好だった。
有害事象は、当初報告された内容と同様だった。副腎皮質ステロイド投与を要する免疫関連有害事象はCEA群の20.2%、CEP群の5.6%に認められた。頻度の高かった免疫関連有害事象は、皮疹(CEA群の20.2%、CEP群の10.7%)、甲状腺機能低下症(CEA群の12.6%、CEP群の0.5%)、肝炎(CEA群の7.6%、CEP群の4.6%)、インフュージョン・リアクション(CEA群の5.6%、CEP群の5.1%)だった。免疫関連肺臓炎はCEA群の2.5%、CEP群の2.6%に認められた。