「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」へ、ニンテダニブが使用可能に

tak

2020年06月09日 01:08

 肺がんと直接の関係はないが、「進行性線維化」を伴う幅広い間質性肺疾患に対して、ニンテダニブが保険適用されることになった。
 ニンテダニブもピルフェニドンも、対象疾患がほぼ特発性肺線維症に限定されていたため、これは大きなbreak throughといってよい。
 「進行性線維化」の定義は緩く(オンライン講演会では、そもそも「現時点で明確な定義はない」と説明されていた)、HRCTにおいて線維化の進行が認められ、呼吸状態が悪化したと担当医が判断すれば、それすなわち「進行性線維化」である。
 今後、「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」を有する患者が肺がんを合併した場合、ニンテダニブを使用する機会が増えるだろう。
 この患者群において、ニンテダニブは間質性肺疾患による無増悪生存期間を延長している。
 その上、肺がんに対する抑制作用も有しているとなると、有害事象の懸念以外にあえて使わない理由が思い浮かばない。
 ・・・もちろん、経済的有害事象は計り知れない。
 ニンテダニブ150mgは6574.4円なので、ニンテダニブだけで1日13148.8円、月間約40万円、年間約480万円の負担が社会にのしかかる。
 INBUILD試験に参加した患者のほぼ100%が喫煙者だったことを考えると、やるせない。
 免疫チェックポイント阻害薬と全く同じ構図がここにも横たわっている。
 適用条件に、「喫煙経験を有する患者は除外する」と付加してはどうだろう。
 馬鹿正直に喫煙歴を申告する人はいないだろうが、少なくとも使用開始後の喫煙習慣を抑制するくらいの効果はあるだろう。

 ニンテダニブに関する過去の記事は、以下を参照。
 なお、本邦では、原発性肺癌そのものに対するニンテダニブの適応はない。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e843642.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e896262.html


<日本ベーリンガー・インゲルハイム社のプレスリリース>
日本ベーリンガーインゲルハイム、国内におけるオフェブカプセルの進行性線維化を伴う間質性肺疾患に対する適応追加の承認取得
―日本初の進行性線維化を伴うILDの治療薬―
https://www.boehringer-ingelheim.jp/press-release/20200529_01


Nintedanib in Progressive Fibrosing Interstitial Lung Diseases (INBUILD study)
Kevin R Flaherty et al., N Engl J Med . 2019 Oct 31;381(18):1718-1727.
doi: 10.1056/NEJMoa1908681.
PDF: https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1908681

背景:
 前臨床データにおいて、細胞内チロシンキナーゼ活性を阻害する働きを持つニンテダニブは、肺の線維化過程を阻害することが示唆されている。特発性肺線維症(IPF)および全身性強皮症を伴う間質性肺疾患患者では、ニンテダニブ150mgの1日2回投与により、努力性肺活量の低下が抑制されたと報告されている。しかし、肺の線維化を招く他の幅広い疾患においても同様の効果が得られるのかはわかっていなかった。

方法:
 今回の二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験は、日本を含む15ヶ国、153施設の共同臨床試験として行われた。高分解能CTにおいて、肺容積全体の10%以上が線維化を起こしている患者を対象として、ニンテダニブ150mg/回を1日2回服用する患者群(N群)と、プラセボを服用する患者群(P群)に割り付けた。全ての患者は、過去24ヶ月間、「治療」を受けたにも関わらず「進行する間質性肺疾患」を有し、努力性肺活量は予測値の45%以上保たれており、肺の一酸化炭素拡散能(diffusing capacity of the lung for carbon monoxide, DLCO)が予測値の30%以上80%未満であることとした。ここでの治療には、ニンテダニブ、ピルフェニドン、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、リツキシマブ、シクロフォスファミド、プレドニゾロン換算で20mg/日以上の糖質コルチコイドは含まないものとした。また、進行する間質性肺疾患の条件として、以下のいずれかを満たすものとした。
 ①24ヶ月間で、努力性肺活量が予測値の10%以上低下したもの
 ②24か月間で、努力性肺活量が予測値の5%以上10%未満低下し、呼吸症状が悪化したか、高分解能CTで線維化の範囲が増加したもの
 ③呼吸状態が悪化し、かつ高分解能CTで線維化の範囲が増加したもの。
 高分解能CTにおける線維化パターン(蜂巣肺の所見や時間的・空間的多相性所見を伴う通常型間質性肺炎パターンか、それ以外の線維化パターンか)を割り付け調整因子とした。
 主要評価項目は、努力性肺活量の年次低下量とし、プロトコール治療開始時点から52週経過時点で測定・評価した。これは、全体の患者群と、通常型間質性肺炎様患者群限定でそれぞれ解析した。

結果:
 2017年2月~2018年4月の期間に対象患者が登録され、計663人(N群332人、P群331人)の患者がプロトコール治療を受けた。412人(62.1%、両群206例ずつ)が通常型間質性肺炎様線維化パターンを示していた。間質性肺疾患の診断名として、慢性過敏性肺臓炎(26.1%)と自己免疫性間質性肺疾患(25.6%)が多かった。N群のうち252人(75.9%)、P群のうち282人(85.2%)が52週の治療を完遂した。
 全体の患者群では、N群の努力性肺活量年次低下量が-80.8mlであったのに対し、P群では-187.8mlで、その差は107.0ml(95%信頼区間は65.4-148.5ml)で、p

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