2016年08月27日
ガイドラインの内容は企業献金で左右される?
高頻度に更新され、我々の業界でもしばしば引用されるガイドラインとして、米国のNCCNガイドラインが知られています。
ASCOやESMOのガイドラインと比較して、
「商業的な影響を受けやすいガイドライン」
とも言われますが、それを裏付けるような論文が一昨日公表されています。
著者がヘルスケア企業から受け取っている一般会計報酬供与額の平均が100万円、研究費として受け取っている額の平均が2400万円とのことです。
著者の86%、108人が一般会計報酬を受け取っているとのことで、その総額は1億2500万円ほど。
著者の47%、59人が研究費供与を受け取っているとのことで、その総額は29億円ほども上ります。
こういった報酬を受け取っているのは、ガイドライン作成に携わるようなごくひと握りの医師・研究者ですから、企業体と医師との間の経済的利益相反(雑駁にいえばカネのやり取り)の総体はもっと遥かに大きいと見積もるべきです。
我が国でも学会発表や研究会発表ではCOIの公表が一般的になりましたが、一定額以下(項目によって50万円以下とか100万円以下とか、規定は様々)は公表の必要はないとされています。
こうしたコストも、薬価として患者さん負担に反映されるわけですから、本来は全て公的な場で、いつでも閲覧可能なように公表すべきでしょう。
米国では既にそうした取り組みが始まっているようです。
我が国の肺癌診療ガイドラインも毎年のように活発に更新作業が行われていますが、ガイドライン作成委員の利益相反を公表するのが望ましいです。
JAMA Oncol. Published online August 25, 2016. doi:10.1001/jamaoncol.2016.2710
Financial Relationships With Industry Among National Comprehensive Cancer Network Guideline Authors.
Aaron P. Mitchell, MD; Ethan M. Basch, MD, MSCr; Stacie B. Dusetzina, PhD
http://oncology.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2546172
背景:
ガイドライン作成に関わる著者と企業体の経済的利益相反(Financial Conflicts of Interest (FCOIs))はガイドラインの推奨内容に影響を与える可能性がある。
方法:
National Comprehensive Cancer Network (NCCN) ガイドラインの著者と企業体とのFCOIsを定量化した。2014年に米国においてNCCNガイドラインの作成に関わった著者のFCOIsを横断的に調査した。対象は肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌のガイドラインに携わった著者とした。FCOIsのデータは、米国サンシャイン法に基づきMedicare / Medicaid サービスセンターから公表された、ヘルスケア産業界から医師・医師教育病院への支払い公開データ(Open Payments data)をもとにした(サンシャイン法と支払い公開制度については、以下のリンクを参照)。
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=423
主要評価項目:
企業体との間にFCOIsの関係がある著者の割合と、企業体から著者への資金供与額の平均値とした。
結果:
125人の著者のうち、108人(86%)が少なくとも1件のFCOIを有していた。
著者らは平均で10,011ドル(0ドル-106,859ドル)の一般会計報酬(交通費、食事代、宿泊費、コンサルタント料を含む)を受け取っていた。また、平均236,066ドル(0ドル-2,756,713ドル)の臨床試験登録に関連した資金供与などの研究費供与を受けていた。84%の著者が一般会計報酬を受けていた一方で、研究費供与を受けていた著者は47%に留まった。
8人(6%)の著者は、NCCNから規定されている、一企業連合あたり50,000ドルまで、あるいは一企業あたり20,000ドルまでの限度額を超えた資金供与を受けていた。
結論:
NCCNガイドラインの著者においては、研究費供与を含むFCOIsはより額が大きい一方で、より少額の一般会計報酬に関連したFCOIsは対象者がより多かった。FCOIsの中には重要な研究奨学金も含まれるが、FCOIsはガイドラインの推奨事項に影響を与えている(資金供与を受けた著者が、供与元の製品が有利になるように手心を加えている)かもしれない。
著者全体の75%以上は少なくとも100ドルの資金供与を受けています。
src="http://img01.junglekouen.com/usr/o/i/t/oitahaiganpractice/m_cbr160008f1-s.png" width="100" alt="" title=" " >
会計種別ごとの内訳(GP:一般会計報酬、RP:研究費供与)。
ASCOやESMOのガイドラインと比較して、
「商業的な影響を受けやすいガイドライン」
とも言われますが、それを裏付けるような論文が一昨日公表されています。
著者がヘルスケア企業から受け取っている一般会計報酬供与額の平均が100万円、研究費として受け取っている額の平均が2400万円とのことです。
著者の86%、108人が一般会計報酬を受け取っているとのことで、その総額は1億2500万円ほど。
著者の47%、59人が研究費供与を受け取っているとのことで、その総額は29億円ほども上ります。
こういった報酬を受け取っているのは、ガイドライン作成に携わるようなごくひと握りの医師・研究者ですから、企業体と医師との間の経済的利益相反(雑駁にいえばカネのやり取り)の総体はもっと遥かに大きいと見積もるべきです。
我が国でも学会発表や研究会発表ではCOIの公表が一般的になりましたが、一定額以下(項目によって50万円以下とか100万円以下とか、規定は様々)は公表の必要はないとされています。
こうしたコストも、薬価として患者さん負担に反映されるわけですから、本来は全て公的な場で、いつでも閲覧可能なように公表すべきでしょう。
米国では既にそうした取り組みが始まっているようです。
我が国の肺癌診療ガイドラインも毎年のように活発に更新作業が行われていますが、ガイドライン作成委員の利益相反を公表するのが望ましいです。
JAMA Oncol. Published online August 25, 2016. doi:10.1001/jamaoncol.2016.2710
Financial Relationships With Industry Among National Comprehensive Cancer Network Guideline Authors.
Aaron P. Mitchell, MD; Ethan M. Basch, MD, MSCr; Stacie B. Dusetzina, PhD
http://oncology.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2546172
背景:
ガイドライン作成に関わる著者と企業体の経済的利益相反(Financial Conflicts of Interest (FCOIs))はガイドラインの推奨内容に影響を与える可能性がある。
方法:
National Comprehensive Cancer Network (NCCN) ガイドラインの著者と企業体とのFCOIsを定量化した。2014年に米国においてNCCNガイドラインの作成に関わった著者のFCOIsを横断的に調査した。対象は肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌のガイドラインに携わった著者とした。FCOIsのデータは、米国サンシャイン法に基づきMedicare / Medicaid サービスセンターから公表された、ヘルスケア産業界から医師・医師教育病院への支払い公開データ(Open Payments data)をもとにした(サンシャイン法と支払い公開制度については、以下のリンクを参照)。
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=423
主要評価項目:
企業体との間にFCOIsの関係がある著者の割合と、企業体から著者への資金供与額の平均値とした。
結果:
125人の著者のうち、108人(86%)が少なくとも1件のFCOIを有していた。
著者らは平均で10,011ドル(0ドル-106,859ドル)の一般会計報酬(交通費、食事代、宿泊費、コンサルタント料を含む)を受け取っていた。また、平均236,066ドル(0ドル-2,756,713ドル)の臨床試験登録に関連した資金供与などの研究費供与を受けていた。84%の著者が一般会計報酬を受けていた一方で、研究費供与を受けていた著者は47%に留まった。
8人(6%)の著者は、NCCNから規定されている、一企業連合あたり50,000ドルまで、あるいは一企業あたり20,000ドルまでの限度額を超えた資金供与を受けていた。
結論:
NCCNガイドラインの著者においては、研究費供与を含むFCOIsはより額が大きい一方で、より少額の一般会計報酬に関連したFCOIsは対象者がより多かった。FCOIsの中には重要な研究奨学金も含まれるが、FCOIsはガイドラインの推奨事項に影響を与えている(資金供与を受けた著者が、供与元の製品が有利になるように手心を加えている)かもしれない。
著者全体の75%以上は少なくとも100ドルの資金供与を受けています。
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会計種別ごとの内訳(GP:一般会計報酬、RP:研究費供与)。
医師とカネ
ADAURA試験サブグループ解析・・・術後補助化学療法の有無、病期別の解析結果
進展型小細胞肺がんにおけるIMpower133レジメンとCASPIANレジメン
原料価格よりも安い値段で薬を販売する!?
CheckMate153試験再び・・・こちらはやめられません
Sintilimab
KEYNOTE-604試験・・・統計学的にはほぼ優位だが、臨床的メリットがあると言えるのか
免疫チェックポイント阻害薬(アテゾリズマブ)、いよいよ肺小細胞癌の領域へ
治療1回5000万円・・・、ホンマかいな・・・。
オシメルチニブ、いよいよ一次治療として承認へ
肺癌治療の費用対効果
経済・財政と国民医療
医療経済から見た適正な肺がん診療
オプジーボ、適正使用と価格改定の議論開始
高額なニボルマブ、ついにNHKのクローズアップ現代で取り上げられました。
ニボルマブと経済
肺癌新治療の費用対効果
日本の借金
医療費と治療効果のバランス
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Posted by tak at 09:35│Comments(0)
│医療経済